5.4.5.3 眼底カメラ
照明光学系ではコード化が重要と述べたが,照明系の設計に特に重点が置かれる例の一つが眼底カメラである。眼底(網膜)は目の一部というだけでなく脳の一部でもあり,脳の血管の状態を外部から直接観察できる貴重な箇所である。眼底の観察は目の小さな瞳孔を通して行わねばならない。眼球は動きやすく,眼底部の反射率は4~5%,瞳を介して観察系に戻ってくる光量は総合で0.1~0.01%と非常に低い。途中経路にある光学素子や角膜からのゴースト反射光が入ると,フレアとなって像のコントラストを著しく損なう。角膜の屈折率を1.376とすれば表面反射は2.5%もある。
眼底カメラには対物レンズと目の間から照明を行う方式や,対物レンズの後から照明するタイプがある。後から照明する方式では図54の様に眼底を照明する光と観察する光を瞳面で分離するGullstrandの原理が採用される。照明光と観察光の境界には余裕分が設けられ,眼の揺動に対処する。
集団検診で使われる眼底カメラの基本構成図を図55に示す1)。光源からの光で照明された照明系のリングスリットは光学系の中央部にある穴あきミラーに結像され,照明/観察光学系の光路に導かれる。穴あきミラー中心(実際には中空)の反射点をAとする。穴あきミラーは対物レンズを介して眼球の瞳位置と共役になっており,図54の瞳の周縁を通る照明が実現される。フレアとなる角膜から直接反射するゴースト光は対物レンズを介して戻った時,共役関係により穴あきミラーに結像して反射し,観察光学系光路には入らない。
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