カルコゲン化合物を用いた中赤外波長可変コヒーレント光源

3. Cr:CdSeレーザー

3.1 Cr:CdSeレーザーの光共振器
図5 Cr:CdSeレーザー
図5 Cr:CdSeレーザー

電子波長制御Cr:ZnSeレーザーよりも波長の長い中赤外領域で波長選択が可能なCr:CdSeレーザーについて述べる。Cr:CdSeレーザーの概略図を図5に示す。Cr:CdSeの励起光源には先述のCr:ZnSeレーザーと同様のQスイッチ動作Tm:YAGレーザーを用いた。Cr:CdSeへの投入する最大励起エネルギーは25 mJとした。Cr:CdSeはブリュースターカットタイプを用いた。

レーザー共振器は,出力ミラー,波長選択用の回折格子,2枚の凹面ミラー(Roc=1000 mm)を用いてZ字型のレーザー共振器を構成した。またレーザーの波長選択には回折格子(溝本数:600 grooves/mm,ブレーズ波長:1600 nm)を用いた。この回折格子の角度を機械的に回転させレーザー共振器内をフィードバックする波長を変化させることで発振波長を制御することができる。

3.2 Cr:CdSeレーザーの出力特性
図6 Cr:CdSeレーザーの波長可変特性
図6 Cr:CdSeレーザーの波長可変特性

Cr:CdSeレーザーの波長可変特性を図6に示す。共振器内に配置した回折格子を調整することで発振波長を変化させることで2.55〜3.06μmの波長可変領域が確認された。また波長2.66μmにおいて2.1 mJの最大パルスエネルギーが得られた。この時のTm:YAGレーザーからの励起エネルギーは21 mJとした。

また2.7μm近傍の波長域において出力エネルギーの減衰が確認された。これはレーザー共振器に搭載しているミラーの反射率が,この波長域で40%程度にまで低下してしまっていることが主な原因である。

図7 Cr:CdSeレーザーの入出力特性とビームプロファイル
図7 Cr:CdSeレーザーの入出力特性とビームプロファイル

次に図7に波長2.66μmと2.94μmにおけるCr:CdSeレーザーの入出力特性を示す。Tm:YAGレーザーからの励起エネルギーは0から21 mJの間で変化させた。Cr:CdSeレーザーは,励起エネルギーが21 mJの時に,波長2.66μmと2.88μmにおいて,それぞれ2.1,1.2 mJの最大パルスエネルギーを得た。この時のエネルギー変換効率は,それぞれ10.5%と7.1%であり,レーザーの発振しきい値は,それぞれ3.2,3.9 mJであった。

また図7に各波長におけるビームプロファイルも示した。TEM00のビームプロファイルが観測されており,励起エネルギーの変化にかかわらずビーム品質が保持されていた。高いパルスエネルギーと高いビーム品質の両方を同時に実現することに成功した。

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