高色純度・高輝度・高耐久性の分子性赤色発光体

6. さいごに

本稿においては「色純度が高い」発光を特徴とする希土類錯体の研究について紹介した。今日に至るまでに無数の発光体が報告されており,その基礎物性として「発光量子収率」がまず評価される。高い発光量子収率を示す化合物については古くからいろいろな種類が報告されている。しかし実際の用途に対しては発光量子収率以外の重要なパラメーターは多数あり,未だ達成できていないことは少なくない。筆者は産業応用に向き合い必要とされている「基礎物性の向上」を目的に掲げた研究を進めると共にそれを達成するための新しい原理・手法を構築していき,分子光化学の学術を掘り下げていきたいと考えている。

参考文献
1)J. -C. G. Bünzli, On the Design of Highly Luminescent Lanthanide Complexes, Coord. Chem. Rev. 293-294, 19-47 (2015).
2)Y. Hasegawa, Y. Kitagawa, T. Nakanishi, Effective Photosensitized, Electrosensitized, and Mechanosensitized Luminescence of Lanthanide Complexes, NPG Asia Mater. 10, 52-70 (2018).
3)Y. Hirai, T. Nakanishi, Y. Kitagawa, K. Fushimi, T. Seki, H. Ito, Y. Hasegawa, Luminescent Europium (III) Coordination Zippers Linked with Thiophene-Based Bridges, Angew. Chem. Int. Ed. 55, 12059-12062 (2016).
4)Y. Kitagawa, F. Suzue, T. Nakanishi, K. Fushimi, Y. Hasegawa, A Highly Luminescent Eu (III) Complex Based on Electronically Isolated Aromatic Ring System with Ultralong Lifetime, Dalton Trans. 47, 7327-7332 (2018).
5)Y. Kitagawa, M. Kumagai, T. Nakanishi, K. Fushimi, Y. Hasegawa, The Role of π-f Orbital Interactions in Eu (III) Complexes for an Effective Molecular Luminescent Thermometer, Inorg. Chem. 59, 5865-5871 (2020).

6)Y. Kitagawa, F. Suzue, T. Nakanishi, K. Fushimi, T. Seki, H. Ito, Y. Hasegawa, Stacked Nanocarbon Photosensitizer for Efficient Blue Light Excited Eu (III) Emission, Communications Chemistry 3, 3 (2020).

■Red luminescent molecule with high color purity, high brightness, and high stability
■Yuichi Kitagawa

■Hokkaido University, Institute for Chemical Reaction Design and Discovery, Advanced Materials Chemistry, Specially Appointed lecture

キタガワ ユウイチ
所属:北海道大学 化学反応創成研究拠点 先端材料化学研究室 特任講師

(月刊OPTRONICS 2020年7月号)

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