東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授の藤田武志准氏,同教授の陳明偉氏らと名古屋大学の超高圧電子顕微鏡施設の共同研究グループは,自動車の排気ガスの浄化触媒として有望なナノポーラス触媒において,孔が拡大して劣化していくメカニズムを明らかにするのと同時に,欠陥をあらかじめ導入することで劣化速度が抑えられる現象を原子レベルで解明した。
自動車排ガス触媒は,さまざまなナノメートルサイズの粒子を用いた不均一系触媒が主流だが,使用過程でナノ粒子同士が合体してしまい,全体の大きさが 5nm 以上になると触媒活性がほとんどなくなるという問題があった。
ナノポーラス触媒は,ナノサイズの無数の孔があいた素材であるため,触媒自体のサイズの影響を受けにくく,ナノ粒子触媒に代わるものとして展開が期待されている。しかし,時間とともに孔のサイズが大きくなって性能が劣化する現象が見られ,その劣化メカニズムの詳細は分かっていなかった。
研究グループでは独自の超高圧電子顕微鏡注を用い,原子レベルで劣化過程を観察した。その結果,表面拡散によってナノ構造が粗大化していくこと,面欠陥として知られる双晶がそのピン留めに有効に作用することが分かった。これは,面欠陥(双晶)がナノ構造の粗大化過程を有効に阻害してくれることを原子レベルで初めて示したもの。
今回の研究成果は,ナノ粒子触媒に代わる自動車排ガス触媒の創出や,面欠陥を恣意的に導入することによる触媒の高性能化につながることが期待される。
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