京大ら,ペロブスカイト太陽電池向正孔回収材料開発

京都大学と九州大学は,ペロブスカイト太陽電池において,ペロブスカイト層から効率的に正孔を取り出すテトラポッド型正孔回収単分子膜材料(4PATTI-C3)を開発した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けては,高い光電変換効率の実現とデバイスの耐久性の向上が求められている。

これまで,主にペロブスカイト層の作製法の改良により,光電変換効率が向上してきた。その一方でペロブスカイト層で光吸収により生成した電荷を選択的に取り出す電荷回収材料の開発がさらなる特性向上のためのボトルネック課題となっている。

従来の材料では,各層間での電荷のもれを防ぐために100–200nm程度のアモルファス性の厚い膜として用いられてきた。しかし,この材料自体が厚いため光を吸収してしまい,ペロブスカイト層に届く光が減少し,取り出せる電流密度が低下してしまう。また,この厚膜のモルフォロジーの安定性がデバイス自体の低い熱安定性の原因となっている。

さらに,一般的に有機半導体の厚膜材料では電気伝導度が比較的低いため,p型のドーパントやイオン性の添加剤を必要する。しかし,これらの添加剤の高い吸湿性と各イオンのペロブスカイト層への遊泳がペロブスカイト層や電極などへのダメージとなり,太陽電池デバイスの耐久性を低下させてしまうという問題があった。

そこで研究グループは,ペロブスカイト層に対して上向きに張り出した極性官能基をもつマルチポッド型正孔回収単分子膜材料(PATTI)を開発し,太陽電池特性への効果について明らかにした。

まずπ共役骨格として,サドル型を有するシクロオクタテトラエン骨格に四つのインドール骨格が縮環したシクロオクタテトラインドール骨格(TTI)に着目し,アンカーとしてアルキルホスホン酸基(PA)を四つ導入したテトラポッド型4PATTI-C3を設計および合成した。

4PATTI-C3の溶液から透明電極にスピンコートすることで,従来の単分子膜材料と違って,ペロブスカイト前駆体溶液に対して濡れ性の高い単分子膜が得られることを明らかにした。

このテトラポッド型4PATTI-C3の単分子層を正孔回収層に用いた逆型ペロブスカイト太陽電池のミニセルおよびミニモジュールでそれぞれ21.7%および21.4%の光電変換効率を達成するとともに,100時間の連続光照射後でも97%以上の出力を保つ高い耐久性を実現した。

研究グループは,この研究成果で太陽電池の開発分野に多大なインパクトをもたらすとともに,その実用化を大きく加速できるものとしている。

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