NTT,グラフェンプラズモン波束を発生/制御/計測

日本電信電話(NTT)は,パルス幅として世界最短(1.2ピコ秒)となるグラフェンプラズモン波束を電気的に発生・伝搬制御することに成功した(ニュースリリース)。

テラヘルツ(THz)波を使った高速な無線通信やセンシング,イメージングは社会実装への道筋が見えつつある一方,回路中のTHz電気信号が取り扱うことができる帯域はギガヘルツ(GHz)帯で律速されている。

今回研究グループは,フェムト秒光パルスと光伝導スイッチを組み合わせたオンチップTHz分光法を応用し,最大で2THzの帯域で電気信号の発生・検出を可能にした。これは,レーザーパルスを使って発生させたTHz領域の超短電気パルスをグラフェンデバイスに入射することで,グラフェンプラズモン波束の伝搬特性およびその制御性,プラズモン発生効率を評価するもの。グラフェンはNIMSの六方晶窒化ホウ素(hBN)を用いて両面を保護し,極めて清浄なデバイスを作製し測定を行なった。

その結果,1.2ピコ秒の超短グラフェンプラズモン波束をチップ上で発生・伝搬制御・計測することに成功した。このパルス幅は入射前の電気パルスの時間幅と同等であり,電気的に励起されたプラズモン波束として世界最短。これはTHz領域の電気信号を歪ませることなく伝送できていることを示している。

また,グラフェンの電荷密度をゲートにより電気的に変調することで,プラズモン波束の位相と振幅を制御できることが分かった。金属ゲートを用いることで,閉じ込め効果の大きなグラフェンプラズモンの発生を可能にするとともに,THz信号に対して透明な酸化亜鉛(ZnO)ゲートをその上に追加することで,高効率プラズモン励起を可能とした。位相と振幅の制御ができたことは,THz領域の電気信号を扱う新しい素子動作を実証できたことを意味する。

さらに,ゲート電極の材料を最適化することで電気パルスからグラフェンプラズモン波束への変換効率が最大で35%に達した。この値は,従来の光からプラズモンへの変換効率を数桁上回るものであり,グラフェンプラズモンは THz領域の電気信号を扱うことに本質的に適していると言える。

また,変換効率だけでなく閉じ込め効果や伝搬速度,パルス幅がゲート電極によって大きく変化することを明らかにした。これらの知見により,目的に応じてデバイス構造を最適化することが可能になるという。

同社は,THz領域での信号処理技術を突き詰めていくことで,将来的な情報通信や計算処理速度の大幅な向上に貢献できることを期待するとしている。

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