大日本印刷(DNP)は,福岡県北九州市の黒崎工場内に新設した有機EL(OLED)ディスプレー製造用のメタルマスクの生産ラインの稼働を2024年5月に開始した(ニュースリリース)。
スマートフォン,タブレット端末,ノートパソコン,モニター等のIT製品でOLEDディスプレーの導入が広がっている。そうした市場の中でも特にディスプレーの大型化のニーズが高まっており,OLEDパネルメーカー各社は,現在の第6世代(G6)サイズよりも生産効率が高いG8のガラス基板での量産を推進している。
同社は黒崎工場の新ラインで,こうした大型化のニーズを先取りしていく形で,G8サイズに対応したメタルマスクの生産体制を構築した。
また,自然災害などの発生に対してもサプライチェーン全体への影響が最少となるよう,常に事業継続計画(BCP)を最適化して,その対応を強化している。今回の黒崎工場の新ライン稼働開始によって,BCPの一層の推進を図り,メタルマスクの既存の生産拠点である三原工場(広島県)のバックアップを可能にするとしている。
さらに,黒崎工場の本格稼働によって,メタルマスクの生産能力を従来の2倍とする予定だという。
メタルマスクは,OLEDディスプレーで色鮮やかな映像を映し出すには,光の3原色(RGB)のそれぞれを自ら発光する有機材料をディスプレー用の基板上(ガラスまたはフィルム)に精密・正確に配置させることが重要となっている。
同社が独自のフォトリソグラフィやエッチングの技術を活かし,薄い金属板に微細な孔を精密・正確に開けたメタルマスクは,この有機材料を基板に配置する工程で用いる。真空状態の装置内で有機材料を蒸発させ,基板上に定着させて薄膜を形成する蒸着の工程で,メタルマスクによってRGB各色を塗り分けている。
OLEDディスプレーの生産工程の中でも特に蒸着は高度な技術・ノウハウを要し,メタルマスクにも高い寸法精度が求めらる。同社は2001年にメタルマスクの開発を開始し,現在はスマートフォン向けを中心に世界トップシェアを獲得しているという。
同社は今後,需要等の動向を把握・分析しながら,黒崎工場の設備を順次増強していくとしている。