立命大ら,反芳香族分子からなる液晶材料を創製

立命館大学,北里大学,京都大学,名古屋大学は,反芳香族分子の積層3量体からなる配列構造を新たに形成し,半導体特性を示す液晶材料の創製に成功した(ニュースリリース)。

π電子系分子は,集合化形態に起因した特異な電子・光物性を示し,有機エレクトロニクスなどへの応用が進んでいる。π電子系分子は芳香族性の獲得によって安定化するのに対し,反芳香族性を示すπ電子系分子は一般的に不安定であり,また合成例の少なさから集合化に関する研究は十分に検討されていない。

一方,反芳香族分子であるノルコロールは適切な分子修飾を施すことで安定化でき,最近の大量合成法の確立によって,構造・電子状態や集合化に関する研究が展開されている。このような背景のもと,ノルコロールを基盤とした次元制御型集合体の例は限られており,とくに液晶状態およびその機能性に関する報告例はこれまでなかった。

液晶性を有するノルコロールの合成を目的とし,今回新たに脂溶性アルコキシ鎖(OCnH2n+1(n=1,4, 8,12,16)をもつ芳香環を2箇所に導入したノルコロール誘導体を合成した。鎖長が短いn=1および4のノルコロール誘導体では単結晶を得ることに成功し,そのX線構造解析からノルコロールが積層したカラムナー構造を形成することを明らかにした。

とくにアルコキシ鎖長がn=4の場合,3分子のノルコロールが3.13Åの距離で近接して積層した3量体を形成することが確認された。このような積層型3量体はノルコロールに特有の積層構造であり,積層した反芳香族分子が積層することによって生まれる芳香族性の寄与が重要であることが知られているという。

一方,アルコキシ鎖長がn=12,16の場合,偏光顕微鏡観察および示差走査熱量測定などの各種測定から液晶状態を発現することを明らかにした。たとえば,アルコキシ鎖長がn=12では,X線構造解析からカラムナー構造を形成することが分かった。

とくに,ノルコロール積層3量体の繰り返し構造の形成が液晶状態の発現に重要であり,これは液晶集合体構造の分子動力学シミュレーション解析からも支持された。さらに,液晶状態の時間分解マイクロ波分光測定による電気伝導性評価から,これまでに報告されたノルコロールと比較して高い電気伝導性を示すことが示唆された。

研究グループは,反芳香族分子を基盤とした電子・光機能性材料が創製され,半導体をはじめとする有機エレクトロニクスへの展開のほか,反芳香族分子に特有の電子状態と集合化に起因した物性の解明が期待される成果だとしている。

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