農工大ら,OCTで蒸発中のコロイド分散液濃度を測定

東京農工大学と英Nottingham Trent大学は,光干渉断層法(OCT)を用いると蒸発中のコロイド粒子分散液の濃度分布を精密かつ迅速に測定できることを実証した(ニュースリリース)。

微細な固体粒子(コロイド粒子)が水の中に溶けずに浮遊している分散液を蒸発させると,コロイド粒子が濃縮され,やがて充填される。分散液の乾燥プロセスは,簡易に粒子充填膜(固体膜)を作製できる手段として,電池電極など薄膜を利用するものづくりでも多用されている。

しかし,蒸発中の分散液内の粒子濃度分布を迅速に観測する手段が確立していないため,分散液内のどこでどのように粒子濃度が上がり,粒子充填が起こるのか,についての定量的な理解は不十分だった。粒子膜の性能は粒子の「詰まり方」で変わるが,どのような制御が可能であるかについては,多くを試行錯誤に頼っているのが現状だという。

研究グループは,二枚のガラス平板に挟まれたコロイド粒子分散液を蒸発させ,OCTを用いて蒸発端面から10μm毎に1000地点で粒子濃度を計測し,合計1cmにわたる粒子濃度分布を僅か15秒で計測することに成功した。また,粒子濃度分布の時間変化を詳細に解析したところ,これまでの測定では観測できなかった以下の点を明らかにした。

①コロイド粒子が十分に濃縮されると粒子の集団として振る舞い,その拡散係数(拡散のしやすさ)は,粒子単体の値に比べて,最大で数百倍程度大きくなる。

②希薄なコロイド粒子分散液では,液膜厚みが0.1mm程度の極めて薄い場合であっても,液膜内に循環流が生じる。この循環流が蒸発端面での粒子膜生成を著しく阻害する。

いずれも,従来の定説とは異なる発見だとする。

光干渉断層法は目の内部検査を行なうために用いられているが,この研究では,全く異なる対象である乾燥中のコロイド粒子分散液の定量的な計測法としても利用可能であることを示した。

光干渉断層法は,これまで計測が難しかった粒子濃度分布の経時変化を迅速に測定できる強力な手段で,例えば,光学顕微鏡による目視観察と組み合わせれば,現象の見た目の変化と定量的な評価を両立できるため,研究グループは,未解明な事柄が多い粒子充填の理解がより一層進むとしている。

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