EX-Fusionは,レーザーフュージョンエネルギー実現の基盤技術であるターゲット追尾・レーザー制御・照射システムの実証研究を行なう同社研究拠点を,中小機構が運営するHi-Cubeに開設したと発表した(ニュースリリース)。
2023年4月,日本政府は「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定し,国内でフュージョンエネルギーの研究・開発が加速する環境が整いつつある。今後,国際的な競争が激化する中で,日本独自のフュージョン技術群の開発とその応用の重要性が高まっている。
このような背景を踏まえ,同社は静岡県浜松市内に,要素技術の統合実証を行なう研究拠点を開設した。研究拠点では,これまで要素技術として開発してきたターゲットの連続供給技術,ターゲット追尾技術,繰り返しハイパワーパルスレーザーの制御・照射技術を統合し,研究開発を加速させていくという。
レーザーフュージョン炉では,直径3-4mmの氷状の水素同位体燃料球を炉の中心めがけて速度100s/sで射出し,照準を合わせてレーザーを多方面から集光照射する。確実にフュージョン反応を発生するためには,反射ミラーから約10m先にある速度100m/sで飛翔するターゲットに対して,位置精度50μm以内でレーザーを集光照射する技術が必要。
同社は,国内の大学研究機関と連携して,ターゲット供給,追尾システム,レーザー制御・照射システムの要素技術開発に取り組んできた。今回開設する研究拠点では,ターゲット供給の精度とレーザーの集光照射精度を向上させ,それらを統合させたシステムで,最終的に炉の実現に求められる目標精度を達成するための基盤技術を開発実証していくとしている。
これまでのレーザーフュージョン研究開発では,レーザー照射頻度が1日に数回と低いため,フュージョン燃料となるターゲットは炉の中心で位置調整してから,レーザーを照射する方式が一般的だった。一方,将来の発電炉では,10Hz程度の繰り返し数でターゲットを連続供給して,レーザーを照射する必要があり,発電炉実現にむけた重要課題の一つとなっていた。
同社では,日本の強みであるハイパワーレーザー技術を活用しながら,コンパクトな装置で要素技術の統合実証を行ない,発電炉に向けてシステムをスケールアップしてく方針を掲げている。
同社は,2026年までの3年間では,レーザーフュージョンエネルギーの実現に向けた要となるレーザー照射システムの統合試験と実証を進めるとしている。