東京工業大学の研究グループは,低温で8μCcm-2を超える自発分極と8,000 を超える比誘電率を有する強誘電性二量体分子液晶を開発した(ニュースリリース)。
強誘電性液晶は,通常の液晶に比べて高い自発分極と比誘電率を示すことから,電子デバイスにおいて革新的な応用が期待されている。
また,高速スイッチング性やメモリー効果を有することから,微細画素構造を必要とするホログラフィックディスプレーの実現に好都合な材料として最近注目されている。
研究グループは,巨大な自発分極および比誘電率を実現するために,大きな双極子モーメントを持つ新規な二量体分子の開発を行なった。具体的には,フッ素置換されたメソゲンコアをサイドウイングとしてペンタメチレンスペーサーで連結した構造を持つ,di-5(3FM-C4T)という二量体分子を合成した。
効果的なフッ素置換により,di5(3FM-C4T)のメソゲンコアは密度汎関数理論により,11.2Dという非常に大きな双極子モーメントを持つことが明らかになった。di-5(3FM-C4T)の構造解析を行なったところ,強誘電ネマチック(NF)相,強誘電スメクチック-A(SmAPF)相,極性等方性(IsoP)相を形成することを明らかにした。
NF相は,U字型分子から構成され,自発分極が約8μCcm-2という高い値を示し,メソゲンコアの大きな双極子モーメントを反映している。一方,SmAPF相は,屈曲した形状の分子から成り,自発分極が約4μCcm-2と高い値を有している。
この自発分極は屈曲角が120°を反映した双極子モーメントであるため,NF相の半分であるが,従来の屈曲分子の中では最高水準である。高温側のIsoP相については,構造解析中であるが,依然として極性構造を示し,小さなドメインに分子の極性凝集がある可能性がある。
今回の研究により開発した二量体分子を用いることにより,電子機器の小型化と低消費電力を実現するコンデンサや,低電圧駆動が可能な圧電素子と静電アクチュエータ,3次元映像を表示するホログラフィックディスプレー等への展開が可能となる。
研究グループは,これにより,自動車,産業ロボット,医療機器などの分野での新たな応用が期待されるとしている。