大阪公立大学,東北大学,中国北京大学,地球上で最も高い熱伝導率をもつダイヤモンドを基板に用いたGaNトランジスタを作製し,SiC基板上に作製した同一形状のトランジスタと比べて,放熱性を2倍以上高めることに成功した(ニュースリリース)。
GaNトランジスタが動作する際に発生する熱とそれに伴う温度上昇は,性能の劣化や素子寿命の短縮といった実用上の重要な課題であり,効果的な放熱手法の開発が必要不可欠となる。
このため,ダイヤモンドのような熱伝導率が非常に高い材料が,素子の放熱材料として注目されていが,素子とダイヤモンドの接合が困難な点などから,期待されるレベルの放熱性の向上が得られず,実用化には至っていない。
研究グループでは,2022年3月には,Si 基板から剝離したGaN 層をダイヤモンド基板に接合したトランジスタの作製に成功し。しかし,Si 基板からの大面積GaN層の剝離や,1,100℃での耐熱性およびSiC基板以上の放熱性向上の実証には至っていなかった。
研究ではまず,Si基板上に窒化ガリウム層(厚さ3µm)と炭化ケイ素(3C-SiC)バッファ層(厚さ1µm)を生成した。その後,Si基板から2層を剥離し,表面活性化接合法を用いてダイヤモンド基板上に接合することで,約1インチのGaNトランジスタを作製した。
高品質な炭化ケイ素薄膜を用いることで,1,100℃の熱処理を行なった後でも接合界面に膜剥離が起こらず,高品質なヘテロ接合界面を得ることができる。
この方法で作製したダイヤモンド基板上GaNトランジスタの放熱性を検証するため,SiC基板上に作製した同一形状のトランジスタと比較した。その結果,ダイヤモンド基板上のトランジスタは,SiC基板上のものに比べ,放熱性が2.3倍向上した。
また,他の先行研究で作製されたダイヤモンド基板上のトランジスタよりも高い放熱性を達成し,トランジスタ特性の大幅な改善に成功した。
今回,GaNパワー素子の放熱性や最大出力が大幅に向上した。これにより,システムの小型化や冷却機構の簡素化が可能となり,CO2排出量の大幅な削減にも寄与するという。
研究グループでは今後,ダイヤモンド基板を用いた大面積窒化ガリウムトランジスタが実現することで,5G通信基地局や気象レーダー,衛星通信分野などの高出力・大電力用途へも利用の幅が広がることが期待されるとしている。