九州工業大学の研究グループは,ノイズのポジティブ効果として知られている確率共鳴現象を液晶の電気対流系を用いて調査し,数値計算と実験調査から確率共鳴現象及び逆確率共鳴現象を自由に発生させたり両共鳴現象を転移させたりする手法を発見した(ニュースリリース)。
電子機器ではネガティブなイメージのノイズだが,例えば、1/fノイズは扇風機の風を自然の風のゆらぎに近い風へと変えるところに応用されている。また,普通は検知できない微弱な信号に適切なノイズを加えることによって,その微弱信号を検出する確率共鳴手法は広く知られている。
これまで物理,生物,情報,脳科学などの分野で確率共鳴現象(SR)と逆確率共鳴現象(ISR)が発見され応用分野も多岐にわたっている。しかしながら,通常の振幅型ホワイトノイズのみを使用していた為,一つのシステムでSRとISRを自由に発生させたり,両共鳴現象を転移させたりすることはできなかった。
そこで,研究グループは,振幅と位相の両ノイズをカラー化し適切に配合する手法を用いて,SRとISRの調査を行なった。調査で用いた液晶の電気対流現象はある電圧(Vc)以上で対流が発生する。その交流電界に振幅と位相ノイズを乗せると,Vcは大きくなったり小さくなったりする。
ある電圧条件に発生した電気対流は,振幅ノイズ強度VNを上げると消えたり,さらに上げると再び現れたりする,不思議な現象が実験で確認できた。さらに,SRとISRを起こすノイズは,位相ノイズ強度φNを上げると電気対流が徐々に消えていくような直感的なノイズのイメージと全く異なる。
さらに,振幅ノイズ強度VNを変えながらVcの変化を示したグラフにおいて,最大値を示すカーブISRから最小値を示すカーブSRへの転移も示された。これはSRとISRの研究において世界で初めて示された成果であり,今後,関連する様々な分野においても応用が期待されるという。
研究グループは今回,数値計算と実験調査から確率共鳴現象及び逆確率共鳴現象を自由に発生させたり両共鳴現象を転移させたりする手法を発見した。
この手法は適切にカラー化した振幅と位相ノイズを絶妙に配合する方式で,バイオテクノロジー,像処理技術,センサ―工学などの多くの関連分野に応用が期待されるとしている。