浜松ホトニクスは,インジウム(In)とガリウム(Ga),ヒ素(As)を材料とする,近赤外光に感度を持つエリアイメージセンサに独自の回路設計技術を応用することで,ハイパースペクトルカメラ向けの従来製品と比べ読み出し速度とダイナミックレンジを約2倍まで高めた「G16564-0808T」を開発した(ニュースリリース)。2023年11月1日(水)より2,585,000 円で発売する。
この製品は,高速読み出しが可能で高ダイナミックレンジのハイパースペクトルカメラ向けエリアイメージセンサ。
同社は,難燃性樹脂が含まれるプラスチックと一般的なプラスチックを鮮明な画像で選別できるハイパースペクトルカメラに向け,InGaAsを材料とするエリアイメージセンサとしては世界最長となる波長2.55μmの近赤外光まで検出するイメージセンサを開発・製造・販売している。
市場からは,プラスチックのリサイクルのみならず,果物の水腐れをはじめとする食品選別や薬の成分分析などに向け,従来製品とは形状が異なり,さらなる高速読み出しが可能でダイナミックレンジの高いエリアイメージセンサが求められていたという。
今回,イメージセンサの読み出し回路の設計を見直し電気信号を並列で処理することで,信号の読み出し速度を約2倍まで高めた。信号処理回路をディプレッション型とし閾値電圧を下げ電流を流れやすくすることで,ダイナミックレンジを約2倍まで向上し,これまでは検出できなかった対象物の情報を利用できるとする。
同時に,回路設計を工夫し,特定の波長の光による信号だけを読み出すマルチライン読み出し機能を加えた。選別対象が反射しやすい波長の近赤外光だけを読み出すことで,読み出し速度を高めることができる。
高速,高ダイナミックレンジのこの製品をプラスチックリサイクルや食品選別,薬の成分分析用途向けハイパースペクトルカメラに組み込むことで,プラスチックリサイクルでは従来と同じ時間で大量の選別が可能になるとともに,選別の精度を高めることができるとしている。
また,食品・薬をはじめコンクリートや住宅建材の劣化,紙のリサイクルなど,より広い分野での応用が期待されるとする。
同社は今後,この製品と駆動回路を一体化したカメラモジュールや,0.95~2.55μmまでと感度波長範囲がより広いエリアイメージセンサの開発を進めるとしている。
●主な仕様は以下の通り。
感度波長範囲:1.7~2.55μm
画素数:320×256h
画素ピッチ:20μm
フレームレート:503fps(読み出しラインの選択により高速化可能)
ダイナミックレンジ:3000