富士通は,スマートフォンなどの一般的なカメラで手のひらを撮影した画像から,手のひらの静脈パターンを抽出して専用センサで取得した静脈パターンと照合できる技術を開発した(ニュースリリース)。
生体認証サービスを利用するためには,前もって生体情報を登録しておく必要がある。この時,精度よく照合させるため,同じ特性をもつセンサが利用される。手のひら静脈認証でも,近赤外光を用いた専用センサを使って登録・照合するため,専用センサがある場所に行き,登録手続きをしている。
もし,スマートフォンなどの一般的なカメラで登録することができれば,より手軽に生体認証サービスが利用可能になる。しかし,一般的なカメラで撮影した場合,太陽光や室内照明などの反射強度に応じて濃淡をつけた可視光画像に静脈情報が含まれ,生体を透過できる近赤外光を用いた専用センサほど鮮明ではない。
そこで同社は,これまでの手のひら静脈認証の研究で培ってきた知見と,光の波長によって異なる手のひらの反射・浸透の特性を利用して,静脈パターンを強調する波長分解・分析を行ない,複数撮影した手のひらの位置をトラッキングしながら画像を加算平均する累積加算処理を行なうことで,静脈パターンを鮮明化する技術を開発した。この技術により可視光画像から鮮明な静脈パターンを抽出することが可能になった。
一般的なカメラと専用センサの画像では,利用する光の特性以外にも差があり,とくにピントが合う距離が異なることで,撮影される画像の範囲に差異があるため,照合精度が低下することがある。そこで,スマートフォンの画像を専用センサの撮影画像の範囲に合うように近づける画像補正技術を開発し,精度よく静脈パターンを照合できるようにした。
また,スマートフォンを片手に持ち,もう一方の手のひらを撮影する場合は,手の位置や傾きなどが安定せず,正確な静脈パターンの撮影が難しいことがある。そこで,画像認識AI技術で撮影した画像から手のひらの姿勢を推定し,適切な位置・傾きになるように誘導する機能を加えることで,専用センサと同じように安定した位置関係で手のひら静脈パターンを撮影することを可能にした。
一般的なカメラで撮影した手のひらの画像から抽出した静脈パターンと,専用センサで取得した静脈パターンの照合を実現することで,自宅でスマートフォンから手のひら静脈情報の事前登録するという応用が可能になる。事前登録が済んでいれば,店舗にある専用センサですぐに生体認証サービスが利用でき,利便性が向上する。同社では,手のひら静脈認証サービスの幅が大きく広がることが期待できるとしている。