オンセミ,経営方針と新製品について会見

ロス・ジャトウ氏

米オンセミは11月4日,引受先を探していた新潟県の6インチウエハー工場の売却について,投資会社であるマーキュリアインベストメント(マーキュリアホールディングスの中核会社),産業創成アドバイザリー,福岡キャピタルパートナーズと合意に達したと発表した(ニュースリリース)。

同工場は,約20,000m2のクリーンルームを有する中規模工場で,1985年に旧三洋電機(現パナソニック)が設立し,2011年にオンセミが買収したもの。今回の売却は同社の「ファブ・ライター(Fab Liter)」戦略の一環であると発表している。

クリス・アダムズ氏

この発表に先駆けた10月25日,オンセミは国内メディア向けに記者会見を開催し,同社の経営戦略を説明すると共に,イメージセンサ製品群について紹介を行なった。その中でシニア・バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのロス・ジャトウ氏はFab Literについて触れた。

同氏によればFab Literは,自社製造と戦略的パートナーである外注企業との協力により,さらなる供給力と堅牢性の向上を目指す戦略。同社は車載用半導体製造においてウエハーの前段階から出荷テストまでの工程を自社で保有するが,各プロセスにおいて外注先も確保している。

車載イメージセンサシェア

しかし,昨今の半導体供給の混乱を受けたことから,設備投資を2倍以上にするとことで外注の不安定な供給能力を自社で補完し,社内外のリソースをフレキシブルに活用できるようにすることで長期の安定供給能力を向上し,サプライヤーとしての責任を果たすとしている。

また,この戦略の一環として同社は,米ニューヨーク州には12インチウエハー工場を建設している。この工場の完成により同社のイメージセンサの製造能力を2倍となるほか,生産拠点の多重化による安定供給能力の確保を目指す。なお,この工場は今第四四半期からの出荷を目指している。

150dB HDRセンサと他社品(130dB)の比較

同社は日本国内に今回売却を決めた新潟工場のほかに,8インチウエハーを扱う会津若松工場を生産拠点として持つ。今後は会津若松工場に集中して投資を行ない,国内10社以上の主要取引を含めた顧客への製品の供給を行なうとしている(国内戦略の詳細については月刊OPTRONICS 2022年9月号掲載の同社日本法人代表取締役 林孝浩氏インタビューを参照)。

バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーでオートモーティブソリューション部門のクリス・アダムズ氏は同社の車載イメージセンサーについて紹介。車載カメラの世界シェアは46%,ADASなど先進機能を搭載したカメラでは67.5%といずれも世界一であり,同社の製品が1時間あたり9人の命を救っている計算になるとした。

日本の自動車メーカーも大きな顧客であり,トヨタ・レクサスのNXに搭載されているパノラミックビューモニタシステムや,スバルのアイサイトなどの安全支援システムに同社のイメージセンサーが採用されているという。

二輪車向け先進的安全ソリューション

そして今回,車載用としては初となる超ハイダイナミックレンジ(HDR)150dBを実現したイメージセンサを発表した。このセンサは新スーパーエクスポージャーピクセルにより高温下でも耐ノイズ性,HDR性能を損なうことなく,赤/オレンジといった微妙な色の違いも的確に捉えるとする。

また,イスラエルRide Visionと開発する,二輪車向け先進的安全ソリューションを紹介,二輪市場向けにイメージセンサで参入することも明らかにした。Ride Visionのオートバイ用衝突回避技術(Collision Aversion Technology: CAT)は,人工知能(AI)を備えたマシンビジョンを使用しており,オンセミの車載用イメージセンサーで取得したハイダイナミックレンジデータに基づいて動作する。

スティーブン・ハリス氏

このシステムはカメラを2台,自転車の前部と後部に取り付ける。カメラの高画質の画像データは小型の車載処理装置に送信され,処理装置はRide Visionの二輪・三輪車用アルゴリズムを用いて,ライダーに360度をカバーする衝突警告をリアルタイムに提供するとしている。

本社プロダクトマーケティングディレクタのスティーブン・ハリス氏は,産業用途においてもトップシェアを持っている同社のイメージセンサの,広範囲にわたる採用事例を紹介した。

産業用イメージセンサ

例えば同社のイメージセンサは映像産業でも使われており,その貢献から2021年には,優れたテレビドラマ,番組,テレビ業界の功績に与えられる米エミー賞をメーカーとして受賞している。また,日本国内においてはアストロデザインが,放送用カメラとして同社の8K最速となる60fpsセンサーを採用している。

アストロデザインではこの8Kセンサをトンネル検査用装置にも応用しており,自動車に積んだカメラで時速100kmで走行しながら壁面の0.15mmのクラックを発見できることを実証している。

スマートiToFセンサ

このほか,インテリジェントエッジモーション機能により,検出に必要のないエリアの画素を動作させないことで50倍以上のバッテリーライフを実現した超小型4Kセンサ,セプロセッシング不要なダイナミックROI機能を搭載する2,000万画素センサを紹介した。

さらに開発品として,スマートiToFセンサを発表した。これは既存製品の2倍の感度と15倍の動作速度を持つグローバルシャッターの裏面照射型iToFセンサで,深度計測と測距処理を行なうインテリジェント機能を搭載する唯一の製品であり,2023年のサンプル出荷を予定しているという。

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