京大ら,超伝導針状結晶からテラヘルツ波放射に成功

京都大学と物質材料研究機構(NIMS)は,ビスマス系高温超伝導ウィスカー(針状)結晶を用いたテラヘルツ光源の製作に成功し,その放射原理を偏波解析により明らかにした(ニュースリリース)。

⼩型のテラヘルツ光源のひとつとして超伝導テラヘルツ光源が注⽬されている。しかし,このような光源素⼦は⾼品質平板状単結晶の育成技術と微細加⼯技術を必要とするため,いままでは単結晶育成からデバイス完成まで1週間以上の時間がかかっていた。

今回研究グループが着⽬したウィスカー結晶は良質な結晶性を持ち,簡単な実験装置で育成できるだけでなく,その形状から⾼強度発振を⽬指したアレイ化、偏波制御のためのデバイスを短期間で作製することに有利だという。

研究グループはすでにウィスカー結晶を⽤いたテラヘルツ発振を発⾒しているが,発振周波数を決定するうえで重要な物質定数である屈折率が明らかでないために放射特性を予測することが困難だった。

研究グループはウィスカー結晶に固有な屈折率を求めるために,素⼦の発振モードを特定する必要があることに着⽬した。放射された電磁波の電場は発振モードによって振動⽅向が異なるため,直線偏光⼦を⽤いた偏波測定を⾏うことで発振モードを推定したことがこの研究の新しい点だとする。

この結果,ウィスカー結晶の屈折率を特定し,これまで使⽤されていた平板状単結晶と異なることが明らかになった。これはウィスカー結晶を⽤いたテラヘルツ発振素⼦の設計が可能になったことを意味する。

さらに,素⼦の空洞共振周波数から少しずれた周波数でも⽐較的強い電磁波の放射が起きることを三次元電磁場シミュレーションによって⽰した。これは,超伝導テラヘルツ発振素⼦が持つ,単⼀の素⼦が単⾊かつコヒーレントなテラヘルツ波を広い周波数範囲で発振するという,最⼤の特徴を説明するカギとなる重要な発⾒だとしている。

この成果は,超伝導テラヘルツ光源の作製プロセスを⼤幅に短縮化するもの。さらに,超伝導テラヘルツ光源に適した材料開発に⼤きく寄与する。化学組成の違いによって結晶の屈折率が異なることが⽰されたことから,適切な材料を選ぶことによってテラヘルツ発振の周波数を⼤幅に拡⼤することができる。

研究グループは,今回⾒出した超伝導テラヘルツ光源の発振機構は,ウィスカー結晶特有の形状から得られる新たな機能性とあわせて,例えば偏波制御,⾼密度アレイ化による⾼強度放射が可能な超伝導テラヘルツ光源の社会実装を促進するとしている。

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