東北大学とジャムコは,金属3Dプリンタを用いて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)へ効率的にせん断荷重を伝達できるような円柱状の突起を有する表面構造を造形し,これにCFRPを熱プレスして直接接合することで,現行の接着剤接合と同等以上のせん断接着強度を発現させることに成功した(ニュースリリース)。
CFRPなどの新規素材の開発により,自動車や航空機といった輸送機のマルチマテリアル化が進んでいる。例えば航空機においては,軽量化のためのCFRPだけでなく,ガラス繊維強化プラスチック,アルミニウム合金,チタン合金といった様々な材料も利用されている。
近年では,フレキシブルな部品製造を念頭に3D積層造形技術を用いたアディティブマニュファクチャリング(AM)への関心が高まっており,今後,3Dプリンタを用いた金属、樹脂,さらには複合材料の3D造形によって,様々な材料の組み合わせによるマルチマテリアル化が進むと考えられている。
研究では,AMを活用した金属(チタン合金)とCFRPのマルチマテリアル化に向けて,3D造形したチタン合金板とCFRP板の間にCFRPプリプレグを挿入し,加熱しながら圧着することでCFRP/チタン合金からなる接合材の作製に成功した。
チタン合金板の3D造形にはSelective Laser Melting方式(SLM)を採用し,圧着したCFRPへ効率的にせん断荷重を伝達できるように基板表面に円柱状の突起を造形した。CFRPの圧着時に円柱状突起間にCFRPが食い込むことによりCFRP/チタン合金界面での破断(界面はく離)が抑制され,市販のチタン合金板にCFRPを圧着した接合体に比べてせん断接着強度が64%向上したという。
また,この接合体のせん断接着強度は,従来の接着剤のせん断接着強度と同等以上(20.6MPa)であり,実用に資するせん断接着強度を有していることも認められた。
この成果を活用しながら組み合わせるCFRPの形状や特性に合わせて金属表面構造を最適化することで,将来的に実用部材のマルチマテリアル化実現が期待されるとする。さらに,今後の展望として,金属を予め3D造形し,その後の工程としてCFRPなどの複合材料を3D造形したようなマルチマテリアルAM技術の開発を目指しているという。
研究グループは,この技術の適用により,意匠性にも富んだフレキシブルかつ素材の特性を活かした製品製造が可能になるだけでなく,大幅な軽量化が進み,部材の切削加工量や機器のエネルギー消費量の削減,ひいてはCO2排出量の大幅な削減に貢献が期待できるとしている。