名古屋大学と昭和大学は,共同開発した人工知能(AI)内視鏡診断ソフト(EndoBRAIN)の有用性が,国際共同研究により検証されたと発表した(ニュースリリース)。
大腸がんは,日本人女性のがんによる死亡数の1位,男性でも3位と,死亡数は増加傾向で,効果的な対策が求められている。
その対策として,大腸内視鏡で早期がんや前がん病変である腫瘍性ポリープを切除することで,大腸がんによる死亡を大幅(53~68%)に減らせることが知られている。
しかし,これらの病変の中には,切除する必要のない非腫瘍性ポリープもあるため,大腸内視鏡検査中にリアルタイムで切除すべき病変か経過観察してよい病変かを見分ける必要がある。
研究グループはサイバネットシステムと,内視鏡診断をサポートする人工知能(AI)ソフトを連携して開発してきた。2018年12月には、この研究成果の第1弾として内視鏡画像を解析し,医師の診断を補助するソフトウェア「EndoBRAIN」が国から承認され臨床で使用されている。
今回の研究で,昭和大学はノルウェー オスロ大学,英キングス・カレッジ病院との国際共同研究により,EndoBRAINの実臨床での有用性を検証した。
1,289名にEndoBRAINを使用した内視鏡検査を実施した研究で,合計892病変を発見し,このうち359個が腫瘍病変だった。EndoBRAINを使用することによって,内視鏡医の腫瘍診断における特異度(非腫瘍を非腫瘍であると識別する精度)は83.1%から85.9%に上昇した。
また医師が高い自信をもって診断できる病変数の割合は,EndoBRAINを使用することによって74.2%から92.6%と大幅に向上した。なお,主要評価項目である感度については統計学上有意な差を認めなかった。
これらの結果から,EndoBRAINを使用することで,医師は治療が不要である非腫瘍を,高い確信度で識別することが可能となりうることが分かった。これは,不要なポリープ治療数を減らす強力な武器となり,医療費を軽減することが期待されるという。
このように,AIによる病変の鑑別診断を,国際共同研究で実施した研究は,大腸内視鏡では初の成果だとする。研究グループは,内視鏡AI医療機器を使用することで医師の診断精度が向上し,患者負担が軽減することが期待されるとしている。