京大ら,量子コンピューターを実現する粒子を解明

京都大学,東京大学,東京工業大学,横浜国立大学,独ケルン大学は,2次元的な平面構造をもつある種の磁性体において現れる「非可換エニオン」と呼ばれる粒子(正確には準粒子)の性質を解明した(ニュースリリース)。

我々の住む3次元世界では,2つの同種の粒子を2回入れ替えると必ず元の状態に戻ってしまう。これに対し基本粒子である非可換エニオン粒子は,2回入れ替えても元には戻らない(非可換)という奇妙な性質をもち,トポロジカル量子コンピューターと呼ばれる環境ノイズに強い量子コンピューターの動作を可能にする。

今回研究グループが注目した物質はα-RuCl3(塩化ルテニウム)と呼ばれる蜂の巣状の平面構造をもつ磁性絶縁体で,非可換エニオン粒子が存在することを示唆する「半整数熱量子ホール効果」が観測されていた。

非可換エニオンは,自身が反粒子と同一であるマヨラナ粒子で構成され,熱ホール効果の符号は,マヨラナ粒子の動きが右ひねりと左ひねりのメビウスの輪のどちらに対応するか,というようなトポロジーによって決まる。非可換エニオンの存在を決定的にするためにはそのトポロジーの詳細を明らかにする必要があるという。

研究グループは,半整数熱量子ホール効果の符号が磁場の方向により逆転する現象を発見し,半整数熱量子ホール効果が現れる磁場方向を特定することで,非可換エニオン粒子のトポロジーを決定することに成功した。

研究により明らかとなった非可換エニオン粒子のトポロジーは理論模型と良い一致を示し,非可換エニオン粒子が物質中に安定して存在することが明らかになった。このことは,トポロジカル量子コンピューターを実現するうえでα-RuCl3が有力な候補物質であることを示しすという。

この研究により,マヨラナ粒子や非可換エニオン粒子のもつトポロジーがはじめて実験的に示された。研究グループは今後,トポロジカル量子計算が現実に可能であるかの実証にむけて,これらの粒子を直接検出し操作する方法の開発を目指すとしている。

その他関連ニュース

  • 京大,同位体を量子ビットとして用いる手法を開発 2024年12月12日
  • 医科歯科大ら,光子と人工原子の量子ビットを交換
    医科歯科大ら,光子と人工原子の量子ビットを交換 2024年05月24日
  • 理研,シリコン量子ビットの高精度読み出しを実現 2024年02月14日
  • 東大,電子とテラヘルツ電磁波の強結合状態を実現 2024年02月14日
  • 名市大ら,2次元ダイヤモンド状コロイド結晶を作製 2024年01月16日
  • 東大,量子コンピューター2種の時間発展を比較 2023年12月05日
  • 東大,テラヘルツと電子の強結合状態を高感度検出 2023年11月09日
  • 中央大,光格子中の量子エンタングルメントに知見 2023年11月02日