群大ら,高精細・低コスト3Dイメージング法を開発

群馬大学と慶応義塾大学は,生命科学研究で用いる多様な生物標本で,より高精細な立体形態解析「3Dイメージング」を行なえる装置と手法を開発した(ニュースリリース)。

生命科学研究では,通常,標本を薄く切った「切片」をつくって顕微鏡観察をする。しかし,切片が標本中のどこにあったか分からないという課題があった。それが分かれば,顕微鏡写真を解釈しやすくなり,顕微鏡画像データの信頼性もあがる。

研究グループは2017年に「同一標本から,切片の顕微鏡画像(平面画像)と連続ブロック面像(立体画像)の両方を取得でき,切片の由来位置を示せる手法」を確立し,「CoMBI法」と名付けた。

その後,「CoMBI法」の使用を通して「より高精細な立体画像の取得と多様な標本への適合」というニーズがあり,研究グループは,CoMBI法の装置を新たに開発し,手法を大幅に改良した。

CoMBI装置は,①標本を薄切しながら,すべての切削面をカメラで連続撮影し,②同時に薄切した「切片」をスライドガラスに回収する。その結果,連続切削面画像から立体画像を再構築し,切片を顕微鏡観察して平面画像を得る。

新しい装置はこうした従来からの特徴に加えて,以下の特長も併せ持つ。①観察時の拡大率は従来比5倍に向上,②装置の構築にかかるコストは,従来型の2分の1。研究機関に広く普及しているミクロトーム(標本薄切装置)と一般向けデジタルカメラで構築し,画像処理は,オープンソースのソフトウェアを利用する。

従来装置では,凍結した標本のみを解析対象としていたが,新手法は,パラフィン包埋標本からも平面および立体画像を得られる。パラフィン包埋標本への適合にあたっては,パラフィンが透明なままでは立体画像の元となる連続切削面画像に背景ノイズが多く混入するため,不透明にする必要があった。そこで,2通りの不透明化法を確立した。

さらに標本準備手法の開発・改良を行ない,以下の特長を実現した。
① 使用したミクロトームは,凍結標本用とパラフィン包埋標本用の運転モードを選べる。
② パラフィンなどの標本包埋剤を不透明化する手法を確立し,標本の表面構造を明瞭に立体描出する。また,標本染色法を開発し,標本内部構造の視認性を改善した。さらに,研究対象としたい特定構造物だけを標識し,立体画像データにすることにも成功した。

研究グループは,新しいCoMBI装置と手法によって,生命科学研究の広い分野で標本の立体解析が気軽に実施されるようになり,顕微鏡データの信頼性向上が期待されるとしている。

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