上智大ら,電子液晶の性質を電子ラマン分光で解明

出典:PNAS https://www.pnas.org/content/pnas/ suppl/2021/05/12/2020585118. DCSupplemental/pnas.2020585118. sapp.pdf

上智大学,米Rutgers大学,京都大学,東京大学は共同で,鉄カルコゲナイド高温超伝導体FeSe1-xSxで見られる電子液晶状態の性質を解明することに成功した(ニュースリリース)。

近年,銅酸化物や鉄化合物の高温超伝導体では,電子の回転対称性が破れた「電子液晶(ネマティック)」相と呼ばれる秩序が観測され,高温超伝導との競合,共存などの関連が注目を集めている。

これまでは磁性を示す高温超伝導体での研究が多く,磁性がない物質でネマティック秩序と高温超伝導の直接的な関係を調べることが切望されていた。

研究グループは,鉄カルコゲナイド非磁性高温超伝導体FeSe1-xSxの純良単結晶を用いて電子ラマン分光の測定を行ない,ネマティック秩序状態で擬ギャップの存在を見出した。

また,鉄カルコゲナイド高温超伝導体でフェルミ流体から非フェルミ流体への変化の機構を解明し,さらに,ネマティック秩序転移温度と電子-格子相互作用に密接な関わりがあることを明らかにした。

この研究で得られた知見は,鉄カルコゲナイドにおけるネマティック秩序と高温超伝導の発現機構の関わりの解明につながるものだとしている。

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