愛媛大学の研究グループは,ジアゾカルボニル化合物をモノマーとするC1重合の手法を用いて,pHに応答して溶解性が変化する新しいデンド
ロンポリマーの合成に成功した(ニュースリリース)。
温度やpH,光,添加物などの外部刺激によって性質を変化させる刺激応答性ポリマーは,薬物輸送システム,センサー,再生医療などをはじめとするさまざまな技術へ利用されている。その刺激応答挙動は一般に,ポリマーの一次構造に依存して変化するため,より高性能な刺激応答性ポリマーの開発のためには,緻密な分子設計とそれを可能にする精密合成が欠かせない。
しかし,ビニル重合においてはこれまでに種々の精密重合の手法が開発されてきているのに対し,比較的新しい合成技術であるジアゾカルボニル化合物のC1重合では,いまだ困難であるという課題があった。
このような状況の中,研究グループは最近,シクロホスファゼンのような嵩高い置換基を有するジアゾカルボニル化合物のC1重合が,制御様式で進行することを見出したが,その重合が制御される理由については不明な点が多くあった。
研究では,別の嵩高い置換基としてデンドロン骨格を有するモノマーを新たに設計し,その重合挙動について詳細に検討した。その結果,生成ポリマーの分子量分布はモノマーの嵩高さの増大(デンドロンの世代伸張)に伴って狭くなることが示された。さらに,デンドロン表面にカルボキシ基を有するポリマーを合成することで,水中でpH応答性を示す新しいデンドロンポリマーの合成にも成功した。
また,その応答pHの値は,同じ側鎖構造を有するビニルポリマーに比べて低くなることを明らかにした。これは,C1重合によって得られるポリマーでは、カルボキシ基が高密度に集積しているためであると考えられ,ポリマー骨格が刺激応答挙動へ及ぼす効果が明確に示されたという。
これらの成果は,ジアゾカルボニル化合物のC1重合に関する新たな知見を与えるのみならず,刺激応答性ポリマーの設計指針に対して新たな知見を与えるものであり,研究グループでは,今後さらなる展開が期待されるとしている。