住友化学は,EUV(極端紫外線)をはじめとした最先端プロセス向け半導体フォトレジストの開発・評価体制強化のため,大阪工場(大阪市此花区)に新棟を建設するとともに,新規評価装置を導入し,2022年度上期の完成を目指す(ニュースリリース)。
フォトレジストは,半導体製造工程におけるパターン形成に使用される感光性樹脂。同社は,これまで,高機能フォトレジスト原料の設計や量産化技術に加え,製造・研究・販売の大阪工場構内集約によるタイムリーな顧客対応力などを生かし,フォトレジスト事業を拡大してきた。
旺盛な需要に応えるため,2019年度には,同社が世界的に高いシェアを有する液浸ArF(フッ化アルゴン)露光向けフォトレジストについて,大阪工場で新プラント建設による生産能力増強を行なった。
半導体市場においては今後,人工知能(AI)技術の進化や次世代通信システム(5G)の本格商用化などを背景に先端半導体の需要伸長が期待されている。こうした領域では新しい光源であるEUV露光が主流になると見込まれ,そのパターン形成にはさらなる微細化に適したフォトレジストが求められている。
そのため,同社は,これまで培ってきた豊富な知見と独自コンセプトに基づく材料設計によって,EUVレジストの大幅な性能の向上を実現した。需要家から高い評価を受けており,近く量産を開始する計画となっている。
今回の体制強化は,フォトレジスト事業の一層の成長を目指した中長期的な事業基盤整備の一環となる。クリーンルームの新棟を建設し,新たな露光機を導入することによって,EUVレジストなどの開発効率を向上させ,顧客へのレスポンスを加速するとともに,品質保証体制を強化する。EUVを含めた最先端レジスト分野での今後の事業拡大にあわせて,さらなる投資も検討していくという。
同社は,中期経営計画において「ICT」(Information and Communication Technology:情報通信技術)を重点分野の一つと位置付けている。
今後も,フォトレジスト事業のみならず高純度ケミカルおよび化合物半導体材料事業の成長や,ディスプレー事業とのクロスオーバー戦略を通じて,半導体材料事業全体のポートフォリオ拡充を図り,Society5.0に代表されるスマート社会やスマートモビリティの実現に欠かせない半導体産業の発展に貢献していくとしている。