理研ら,超薄型有機太陽電池の寿命を15倍に

理化学研究所(理研),東京大学,米カリフォルニア大学 サンタバーバラ校,豪モナシュ大学の研究グループは,高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功した(ニュースリリース)。

超薄型有機太陽電池は基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使用しているため,十分なガスバリア性の確保が難しく,また安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため,これまでエネルギー変換効率と長期保管安定性の両立は依然として不十分だった。

今回開発した超薄膜有機太陽電池は,基板から封止膜までの全てを合わせた膜厚が3μmと極薄でありながらエネルギー変換効率は13%に達し,大気中で3,000時間保管した後も95%以上のエネルギー変換効率を保持することができた。

これまでの研究では,エネルギー変換効率は10.5%,保持率95%を満たすのは約200時間だった。これと比較すると,エネルギー変換効率は約1.2倍向上し,長期保管安定性は15倍も改善した。

この研究成果のポイントは,高エネルギー交換効率と熱安定性を両立する新たなドナー・アクセプター材料ブレンド膜の設計による発電層の改良と,ポストアニール処理による発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送の改善を実現したことにある。

今回ドナー材料に用いたPBDTTT-OFTは,東レが近年新たに開発した熱安定性に優れる半導体ポリマー。これまでの研究では,このPBDTTT-OFTとランダムに混合したバルクヘテロ接合構造の発電層を作製するために,アクセプター材料としてフラーレン誘導体を使用していた。

しかし,この組み合わせではPBDTTT-OFTの高効率や熱安定性といった特長を十分に引き出すことができなかった。今回,アクセプター材料として非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで,光捕集性と熱安定性により優れる発電層を作製できた。

これに加え,素子作製後に簡単な熱処理(150℃)を行なうポストアニール処理によって,長期保管安定性が大きく改善することを発見した。微小角入射広角X線散乱法やX線光電子分光法などによる物性評価の結果,この現象は,ポストアニール処理を施すことによって,発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善した結果であることが判明した。

さらに,他の発電層材料や正孔輸送層を試したところ,ポストアニール処理後にエネルギー変換効率が低下してしまったことから,今回の素子構成でのみ高いエネルギー変換効率が保持されることが分かった。

この研究成果は,ウェアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエータなどに安定的に電力を供給できる,軽量で柔軟な電源として応用されるとしている。

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