東北大,ハーフメタル材料でスピン変換を観測

東北大学の研究グループは,ホイスラー合金における特異な電流-スピン流変換現象(スピン変換)を観測することに成功した(ニュースリリース)。

スピントロニクス素子では電流とスピン流(スピン角運動量の流れ)をいかに効率よく変換するかが素子性能を左右する。一方,磁石(強磁性体)の内部(バルク)と界面がどのようにスピン変換に寄与しているかは全く理解されていなかった。

今回,研究グループはハーフメタル材料の一つとして期待されているホイスラー合金に着目し,強磁性金属中におけるスピン変換の機構を詳細に調べた。ホイスラー合金には L21型のフルホイスラー合金と C1b型のハーフホイスラー合金の2種類がある。

この実験では,C1b型NiMnSbホイスラー合金と磁性絶縁体であるYIGとを積層化させて金属/絶縁体の接合を作製した。この接合に対し,YIGの磁気共鳴を外部から励起すると,スピンポンピングという現象により,YIGからNiMnSbにスピン流を注入することが可能となる。

研究グループは,NiMnSb中の逆スピンホール効果(スピン流から電流への変換効果)に由来する電圧信号の観測に成功した。そして,電圧信号の温度依存性およびNiMnSb膜厚依存性を系統的に調べた。

スピンポンピングと逆スピンホール効果によって生じた電圧信号の例では,測定温度によって,電圧信号の出る向き(符号)が変わっている。これらの結果から,1)ある温度において電圧信号の符号が反転すること,2)符号が反転する温度が膜厚に依存することを発見した。

このような温度に依存した特異な振る舞いは今までに報告がなかった。そこで,実験結果を理論計算と比較したところ,ハーフメタルでは界面とバルクでは電子状態に大きな違いが生じると考えられ,その違いに起因した異なるスピン変換過程が電圧の符号反転に関係していることが判明した。

つまり,今回得られた電圧信号の符号反転を検討した結果,強磁性体中におけるスピン変換にはバルクと界面の両方の寄与があることが実験および理論の両面から示されたという。同時に,ハーフメタル材料の界面における電子状態の制御がスピン変換にとって重要なパラメータであることもわかった。

この結果は,強磁性体中でのスピン変換の機構解明に繋がる知見であり,バルクと界面の特性を個別に制御することによって,素子の性能向上や機能拡張が期待できるとしている。

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