大阪大学とロームは,共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunnelin Diode:RTD)のテラヘルツ波の検出感度を1万倍に向上した(ニュースリリース)。
電波と光の中間領域の周波数を有する電磁波であるテラヘルツ波は,超高速無線通信,高分解能センシングなどの応用が期待されている。しかし,その発生,検出技術が未熟であるという課題があり,各種応用を切り拓くためには検出感度の大幅な向上が必要となる。
今回研究グループでは,検出器としての共鳴トンネルダイオードに着目した。通常,動作電圧を負性抵抗領域に設定した場合,共鳴トンネルダイオードは発振するが,検出器としての動作は不安定になる。
一方,外部から到達し,共鳴トンネルダイオードにて検出されるテラヘルツ波と前述の発振周波数が十分に近い場合,共鳴トンネルダイオードの発振状態は外部からのテラヘルツ波と同期し,その発振出力が検出動作に援用されることを見いだした。
このようにして,共鳴トンネルダイオード単体での同期検波をテラヘルツ帯で実現し,本方式と従来の直接検波方式を比較したところ,1万倍の感度の向上が得られた。また,350GHz動作の共鳴トンネルダイオード送信器からの出力をオンオフ変調方式にて無線伝送したところ,この研究の同期検波方式を利用した共鳴トンネルダイオード受信器にて復調することで高い信号強度が得られ,30Gb/sの通信に成功した。
この通信速度は,電子デバイス送受信器を用いた誤り訂正なしのエラーフリー無線通信として,過去最高の値であり,非圧縮スーパーハイビジョン映像(8K Dual Green方式)の伝送も可能となるという。
この研究をさらに発展させることにより,将来的には,100Gb/sを超える超高速通信も可能になるという。また動作周波数を2THz程度まで向上させることも期待でき,通信応用だけではなく,紙や衣服といった誘電体を透過し,特定の物質で吸収および反射されるテラヘルツ波の特性を生かした分光分析や非破壊検査,ガスや水分量の計測,セキュリティ応用および,ミリ波よりも短い波長を有するというテラヘルツ波の特長を生かした高分解能なレーダー応用なども期待できるとしている。