北大ら,衛星カメラで有色溶存有機物を観測

北海道大学の研究グループは,北海道大学及び東北大学が中心となって研究開発した国際理学観測衛星ライズサットに搭載した海洋観測カメラ「OOC」による有色溶存有機物(CDOM)の観測に成功した(ニュースリリース)。

ライズサットは,JAXA革新的衛星技術実証1号機を構成する7衛星の1つとして,イプシロンロケット4号機により打ち上げられた。OOCは4波長の多波長可視近赤外カメラで,可視域に3バンド(405nm,490nm,555nm),近赤外域に1バンド(869nm)の計4バンドで観測できる。

特に,405nmバンドはCDOM測定に焦点を当てて設計しており,気候変動と密接に関係する地球の炭素循環において,森林火災同様にインパクトがあると予想されている永久凍土融解によるCDOMの河川から海洋への流出を評価でき,北極海へ流入する河川の河口付近での観測も計画している。

また,869nmバンドは可視域バンドの大気補正のために準備し,バンド幅は10nm,空間解像度は74m,観測幅は48km。観測方向は,直下視(Nadir)を基本とし,衛星の運用上可能であれば,海面からの太陽光反射(Sunglint)を避けるために制限なしで傾けた姿勢や,海上の一点をポインティングする姿勢制御なども可能という。

OOCの画像処理は,4バンドの光学的な歪みを除去した後に,869nmバンドを用いて可視域の各バンドの大気補正を行なう。その後,CDOM光吸収係数やクロロフィル量などの測定結果を得て,最後に幾何補正して解析に利用する。

事例として,2019年6月3日のベーリング海峡付近のCDOM光吸収係数画像では,高濃度のCDOMがベーリング海からチュクチ海へ向けて流れている様子のほか,沿岸域ではより高濃度のCDOM分布が見られる。さらに,定量的な利用のためには,JAXA衛星(GCOM-C)や現場で観測されるデータとの照合や検証が必要となるという。

研究グループは今後,北極海に流入するロシアのレナ川やオビ川の河口付近の観測をはじめ,北極海航路沿いの沿岸域の観測を開始し,超小型人工衛星を利用した地球周回軌道における北極域観測技術の構築へ貢献していくとしている。

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