名古屋大学の研究グループは,GaNパワーデバイス製造工程で必須技術となる選択イオン注入による導電型制御に対して,Mgイオン注入による高品質p型GaNの形成を実現した(ニュースリリース(6頁))。
研究グループは,1989年にエピタキシャル成長でMg添加によりp型GaNの実現に世界で初めて成功している。p型GaNの実現により,GaN pn接合の作製が可能となり,青色LEDや青紫色LEDが実現された。
一方,GaNのパワーデバイスの実現には,素子のある部分にのみp型GaNを形成することが必要。そのために半導体製造技術ではイオン注入による選択的導電型制御が一般的となる。しかし,GaNについてはMgをイオン注入してもうまくp型にならないことが30年近く続いていた。
研究グループは,イオン注入したMgの活性化方法として,従来は保護膜を形成して1気圧の窒素中で加熱処理したが,今回は保護膜なしで1万気圧の窒素中で加熱処理した。活性化(熱処理)後のGaN表面は,従来では表面が荒れるが,今回の熱処理では保護膜なしでも平坦な表面が保たれた。
また,新熱処理法で活性化したイオン注入Mg層のホール測定をした結果,p型GaNエピタキシャル成長した試料と同等のホールが発生している(p型GaNができている)ことが確認された。
研究グループは,今回の研究でGaN基板上のGaNデバイス(GaN on GaNデバイス)の社会実装を加速するため,デバイス要素技術の確立とその低コスト化を目指していた。これまでの取り組みで,最難関課題に対する技術を確立することができたという。また,今回の研究は,平面内pn接合が形成可能なため,将来は集積回路素子への応用も期待できるとしている。