名古屋大学の研究グループは,イオン注入後,超高圧化状態で熱処理することにより,安定したp型結晶を作製することに成功した(ニュースリリース)。
イオン注入によるウエハー面内での伝導型制御は,単元素半導体であるSiでは一般に用いられ,IC,LSIの製造では欠かせない技術。しかしGaNでは,これまでイオン注入後の熱処理による結晶構造破壊の回復が十分にできず,高品質な結晶層の形成を実現できていなかった。このため,高耐圧構造の作製や集積回路デバイス作製の際の大きな足かせとなっていた。
今回,研究で開発した超高窒素圧下で熱処理を行なう方法により,世界で初めて高品質なp型GaN層の作製に成功した。p型GaNエピタキシャル成長した試料と同等のホールが発生していることを確認している。
また,クリーンルーム(C-TEFs)でのGaN基板上の縦型GaNトレンチMOSFETおよび横型GaN HEMTの基本プロセス条件を確立した。これにより,2019年4月よりデバイスウエハー提供サービスを開始している。
研究グループは,今回の研究の成果は,高耐圧パワーデバイスおよび高耐圧pnダイオードやショットキーバリアダイオードが形成可能となるため,高耐圧・低オン抵抗トランジスタ実現のキーテクノロジーとなり,また,平面内pn接合が形成可能なため,将来は集積回路素子への応用も期待できるとしている。
さらに,GaN専用クリーンルームを活用することで,GaN on GaNデバイスの社会実装に寄与するとしている。