富士経済は,従来光源照明からLED・有機EL照明へのシフトが進み,特にアジアを中心に需要増加が注目される,照明器具の世界市場を調査し,その結果を「世界の照明器具/光源市場の将来展望 2019」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,照明器具(従来光源器具,LED照明器具,有機EL照明器具)のほか,管球ランプ(従来光源管球ランプ,LED管球ランプ)の世界市場についても地域別に現状を分析し,将来を予想した。
それによると,2018年の市場は2017年比5.4%増の8兆1,141億円が見込まれる。その内,LED照明器具は5兆1,665億円と60%以上を占め,堅調に伸びているという。有機EL照明器具はまだ小規模ながら2017年比3.0倍の337億円を見込む。
2030年の市場は2017年比43.1%増の11兆154億円を予測する。その内,LED照明器具は9兆8,720億円,有機EL照明器具は7,364億円と堅調な伸びが期待されるという。特にアジアでは,人口増加や経済成長に伴う建築需要増,無給電地域の減少,省エネ製品の切り替え,エネルギー問題を背景とする省エネ政策や法規制の強化・推進などにより需要が大幅に増え,市場拡大をけん引するとみる。
中国は,照明器具の品質面の向上と価格低下が進んでおり,人口増加や経済成長を背景とする旺盛な建築需要や都市開発の進展,既存施設への導入により,中長期に安定的な市場拡大を予想する。
加えて,制御・ソリューション・IoT化など先進技術を盛り込んだ製品・サービス開発と普及価格への価格低下のスピードが速く,政策による推進力も強いことから,将来的には照明器具・技術の先進地域になると期待されるとする。また,有機EL産業への投資育成により,有機EL照明器具の普及も進む可能性があるとみる。
インドは,「National LED Programme」など,政府主導でLED照明の普及に意欲的。無給電地域の開発や人口増加・経済発展に伴う都市化により,今後の市場拡大を予想する。短期的には高効率照明製品の普及を予想し,中長期的にはLED照明器具へのシフトが本格化するとみる。
東南アジアは堅調に伸びているという。インドネシア,タイの構成比が高く,フィリピン,マレーシア,ベトナムが続く。各国,地域で堅調な市場拡大が期待されるが,特にタイとフィリピンが大きく伸びるとみる。
タイは,ASEANの製造拠点として経済発展を続けており,電力不足への対応が継続的な課題。電力不足を背景にLED照明へのニーズが高く,政府主導のLED照明の推進支援策の後押しもあり,今後の需要増加が予想されるという。
フィリピンは,経済発展に伴うエネルギー不足が課題であり,発電所の新設や省エネルギー製品の普及促進に取り組んでいる。特に政府主導で屋外照明や公共施設照明のLED化,住宅・非住宅における屋内照明のLED化が進んでいる。
照明器具の市場は各地域で拡大が予想される一方,管球ランプの市場はアジアを除いて縮小を予想する。従来管球ランプからLED管球ランプへの切り替えによる長寿命化や,光源一体型である照明器具への需要シフトの進展により管球ランプのリプレイス機会が減少することが主な要因だとする。
ただし,アジアではエネルギー需要の急増を背景に継続的かつ効果的な省エネ対策が求められているため,安価なLED管球ランプの普及推進策などがとられることにより,市場は拡大するとみている。