大阪府立大学は,光の圧力によって集積化した金属ナノ粒子の集合体からの発熱効果でバブルを発生し,その収縮過程を利用してバブル表面に吸着したタンパク質とナノ粒子の集合体のサイズから1000兆分の1グラム(=1fg)レベルのタンパク質を数分で検出できる「バブルガムセンサ」の新原理を見出した(ニュースリリース)。
第5期科学技術政策における超スマート社会(Society 5.0)においては,多様な生体物質の検査技術の迅速化・高感度化が求められている。
今回,研究グループは,光の圧力と光発熱効果によって発生する対流(光誘起対流)とを利用して,金属ナノ粒子固定化ビーズとタンパク質を光誘起バブル表面に輸送し,添加するタンパク質の量の大小による変化を調べたところ,観測領域で数十pg~数百pg(数μg/mL~数十μg/mL)を境に顕著な差異を見出した。
ビーズ表面の金属ナノ粒子を高密度化すると生体にダメージの少ない赤外波長域のレーザーを用いても強い光の圧力を発生できることを理論計算で確認し,金のナノ粒子(AuNP)を用いた場合に効率良く光の圧力と光誘起対流を発生できることを予備実験で確認した。
例えば,金ナノ粒子固定化ビーズの分散液に添加するタンパク質が観測領域で3.4fg~34pgとなるように濃度調整し(0.5ng/mL~5μg/mL),レーザー照射によるバブル発生後も10秒間レーザー照射し続け,その後照射をオフにしてバブルが消滅するまで待った結果,レーザー照射点付近に発生した単一バブルが3~10分程度で消滅し,集合体が形成されることがわかった。
このとき,1fg~100pg の範囲でタンパク質量が多ければ多いほど大きな集合体が残ることがわかり,タンパク質の定量分析に利用できる可能性を示した。
研究グループは,これは風船ガムが収縮する際に凝集体を形成することと似ており,その過程を利用したバイオセンサーということで「バブルガムセンサ」名付けた。
一方で,タンパク質量が数百pg(数十μg/mL)以上になると,メレンゲのようにタンパク質の気泡性により多数のバブルが発生することがわかった。その表面に多数の金属ナノ粒子固定化ビーズが被覆していることに注目すると,広帯域な光吸収を示す金属ナノ粒子固定化ビーズの集合体形成にも利用できるという。
研究グループは,今回の研究は,光ピンセットの発展技術に関するもので,微量の血液などの体液から,成人病やアレルギーの原因となるタンパク質を検出できるバイオ分析技術の基礎となるものであり,食品業界や医療分野の革新的な検査手法になり得るとしている。