明大ら,ユーグレナ光合成によるアミノ酸生産を示唆

明治大学およびユーグレナ社らは発酵条件(暗・嫌気条件)で培養したユーグレナが,細胞外に様々なアミノ酸を放出することを発見した。特にグルタミン酸に関しては,発酵条件のpHが生産量に大きく影響を与えることを明らかにした(ニュースリリース)。

アミノ酸はタンパク質を構成する代謝産物として知られており,他にも細胞内の代謝や環境応答に重要な役割を担う。工業的には,薬理機能を利用した薬品への利用をはじめ,呈味(ていみ)成分として食品添加物や,飼料の栄養補助などと幅広い分野で活用が期待されている。

特にグルタミン酸は,最も市場規模の大きなアミノ酸の一つで,年間330万トンが発酵法によって生産されている。アミノ酸の主な工業生産方法は発酵法であり,主に使用される生産株は,コリネバクテリウムや,大腸菌,酵母などの生育に糖などの炭素源を必要とする従属栄養生物。しかし,これらの生物による発酵法では,生産時に使う糖源のコストの割合が大きいため,糖の代替となる炭素源が望まれている。

研究で使用したユーグレナは,植物と同じように光合成によって増殖する。また,増殖時には温室効果ガスの一つであるCO2を光合成によって吸収するため,ユーグレナをはじめとする微細藻類を使用した物質生産は環境負荷の低減につながると考えられている。

研究グループでは,光合成によって増殖させたユーグレナを,発酵条件(暗・嫌気条件)下に移行した際に,細胞外にアミノ酸を放出することを発見した。アミノ酸の生産量は,発酵時に培地の成分であるリン酸水素アンモニウムの濃度を変化させることで変化した。アミノ酸のうち,グルタミン酸に関しては,発酵条件でのpHによって生産量が制御されていることが分かった。

このように研究では,ユーグレナの光合成を基盤としたアミノ酸の生産技術を開発した。今後,光合成生物を利用した物質生産が発展することで,環境問題の一つである温室効果ガス削減に寄与できるなど,持続可能な循環型社会への推進が期待できるとしている。