小型・軽量で超高感度な磁気センサーを開発,提供する東北大学発ベンチャー「スピンセンシングファクトリー株式会社(SSF)」が設立された(ニュースリリース)。
東北大学工学研究科では,磁石を使った電子デバイスを作製している。1994年に世界で初めてTMR(トンネル磁気抵抗)素子の室温動作を実証したのは同グループであり,その後の特性改善により,TMR素子は高密度ハードディクスドライブ(HDD)において情報を読み出すセンサーとして,広く世の中で使われてきている。
徐々に感度が上がっていく中で,将来的には非常に微弱な磁場信号である生体磁場が直接観測できるのではないかと考え,東北大学医学系研究科と共同研究を2010年にスタートさせた。医学系研究科では,室温で動作する小型の磁気センサーを熱望しており,この共同研究によって工学研究科のシーズと医学系研究科のニーズが合致することとなった。
工学研究科は,TMRセンサーの高感度化に取り組み,世界に先駆けて心臓および脳からの磁場信号検出に成功した。これにより,小型・軽量でかつ超高感度なTMRセンサーを高度医療診断へ応用することが現実的となってきた。例えば体のどこかが不調と感じたとき,大病院に行かなくても非侵襲の診断で精密検査が可能となるなど,小型・軽量化は「いつでも」「どこでも」受診可能な社会を実現するということになる。
また,磁場自身の特徴である高分解能性を積極的に利用すると,非侵襲検診による疾患の予知も夢ではないという。さらに,医療目的以外でも,非接触で生体内の生命活動をモニタすることができれば,センサーの応用範囲は格段に広がるとしている。
TMRセンサーは超高感度な上に小型・軽量であり,医療応用のみならず,さまざまな産業分野で革命的な進展を可能とするデバイスとして認識され始めている。SSFは,TMRセンサーの持つ大きな可能性を,地域の企業と共に世界へ向けて実現する会社を目指すとしている。