神大ら,タンパク質中の金属イオンの電子状態を分析

神戸大学と大阪大学は,金属イオンを含むタンパク質の電子状態を微量の溶液でも決定できる新しい分析手法の開発に成功した(ニュースリリース)。

タンパク質中に金属イオンを含有している金属タンパク質は,生体中で酸素運搬・貯蔵,電子伝達,酸化・還元といった重要なはたらきをしている。このようなタンパク質は多くの場合,金属イオンが活性中心としての役割を担っている。

そのため,金属イオンの状態を詳しく調べることで,機能発現のメカニズムなどを知ることができる。しかし,従来の測定法ではある程度まとまった量のタンパク質試料が必要であった。

従来の電子スピン共鳴(EPR)測定では,金属イオンによって吸収された電磁波の変化を検出している。一方,今回研究グループは,ナノメンブレンと呼ばれるトランポリン形状のデバイスを検出に用いた。EPRでは電子スピンが電磁波を吸収することで高いエネルギー状態に遷移するが,この時同時にスピンの向きが反転し,金属イオンのもつ磁石としての性質も変化した。

そこで研究グループは,ナノメンブレン上に微小な磁石をあらかじめ貼り付けておき,この磁石と金属イオンが引き合う力の変化をナノメンブレンに働く力に変換してEPR信号を検出した。ナノメンブレンは厚さが100nmしかないため,EPR吸収に伴う微弱な力の変化も感度よく測定できたという。

溶液試料はメンブレン直上の溶液セルに入れて測定を行なった。セルの体積は50μL(=0.05cc)であり,この中に1-10μL(0.001-0.01cc)程度の微量溶液を入れて測定を行なった。セルの上部は溶液の乾燥を防ぐため,樹脂製のキャップで覆った。この測定法は,薄くて壊れやすいナノメンブレンと溶液セルが独立していることから,試料交換を容易に行なうことができるという利点がある。

研究グループは装置の性能を評価するために,ミオグロビンと呼ばれる鉄含有タンパク質とそのモデル物質のヘミンクロライドに対して,高周波領域(0.1THz以上)でのEPR測定を行なった。その結果,50mM濃度,2μLのヘミンクロライド溶液試料に対し0.1-0.35THzという広い周波数範囲でEPR信号の検出に成功した。

また,ミオグロビン溶液に対しても8.8mM,10μLの測定試料に対して特徴的なEPR信号の観測に成功した。この測定方法は,広い周波数範囲での測定を行なえる点が大きな利点で,様々な磁気的性質をもつ金属タンパク質に対して適用することが可能だという。

研究グループは今回の研究が,これまで測定不可能とされてきた金属タンパク質への適用や,未解明の生命現象を解明する上で有力な分析手法となることが期待できるとしている。

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