名古屋大学は,世界最小クラスの発電・センシング一体型血糖センサー(発電とセンシングを同時に行うセンサー技術)を新たに開発した(ニュースリリース)。
昨今,糖尿病治療や予防においては,患者自身が血糖値を持続的に把握しコントロールすることが重要となっている。
血糖値の測定には,従来,皮下にセンサーを埋め込むなど侵襲性のある装置が主流となっていた。一方,低侵襲性のタイプでは,血糖濃度と相関のある涙液糖濃度に着目したコンタクトレンズ方式も注目を浴びている。しかし,無線給電用メガネ型端末等が必要となるため,就寝時や運動時の測定に難点があり,普及が進んでいなかった。
今回,研究グループは持続型血糖モニタリングの普及に貢献できる技術を開発。世界最小クラスの固体素子型グルコース発電素子(グルコースを基に電力を生成する素子)とサブ平方ミリサイズで超低消費電力の半導体無線送信器回路技術を開発し,それらを融合した発電・センシング一体型血糖センサーを搭載したコンタクトレンズを試作した。
血糖濃度と相関のある涙液糖濃度によってグルコース発電素子から出力電圧が変化するが,半導体集積回路を用いてこの出力電圧を無線発信頻度へと変換することで発電とセンシングの同時動作を実現している。
発電とセンシングを同時に行う固体素子型グルコース発電素子は,わずか0.6mm角と世界最小クラスで,涙液に含まれる糖(グルコース)を基に1nW以上の電力を生成する。また,データを送信する半導体無線送信器回路技術についても,従来の1万分の1程度の0.27nW(電源電圧は0.165V)で駆動させることに成功した。
この2つの技術を融合し,涙液に含まれる糖をモニタリングしながら,必要な電力を生成することも可能になった。これらにより給電用のメガネ型端末も不要になり,コンタクトレンズを装着するだけで継続的に血糖値をモニタリングできるという。
研究グループはこの研究により,より多くの人が低侵襲かつ低コストで自身の血糖値を把握できるようになり,糖尿病医療への貢献やヘルスケア用品への展開が見込まれるとしている。