応力測定機器メーカーの共和電業は,各種構造物の奥行き方向を含むXYZ方向の微小変位を,1台のカメラで多点同時に高速で測定するサンプリングモアレカメラを,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトの成果をもとに開発,9月5日より販売を開始する(ニュースリリース)。
国内の多くの橋梁や道路,鉄塔などの社会インフラは,建設から50年以上が経過し,インフラ維持管理・更新のための人材不足やコスト増大の克服が社会課題とされている。そこでNEDOは,既存インフラの状態に応じて効果的で効率的な維持管理・更新などを図るため,的確にインフラの状態を把握できるモニタリングシステムの技術開発プロジェクトを推進している。
このプロジェクトでは,共和電業,福井大学,ジェイアール西日本コンサルタンツ,4Dセンサーで構成する研究グループが開発に取り組んだ。従来,インフラ構造物の微小変位測定は,足場設置などのコスト負担が大きいほか,機器の設置が可能で人の手が届く箇所でなければ作業しにくいなどの課題があった。
そこで,研究グループは,遠隔から非接触のモニタリングを実現するために,高精度なカメラ画像による解析技術の開発を進め,この開発成果をもとに共和電業は,サンプリングモアレ法による高精度なカメラ画像で,各種構造物の奥行き方向を含むXYZ方向の微小変位を1台で多点同時に高速で測定するカメラ「DSMC-100A」を開発した。
具体的には,XYZの3方向の変位を遠望から1台のカメラで,高速撮影(最大500fps以上)が可能。また,測定中の変位データが多チャンネル同時にモニタリングできるので,収録データの異常や構造物の現在の状況を現場で即座に確認できる。また,長期連続モニタリングに対応した定点観測モードにより,長期無人測定が可能。年間を通した構造物の変状測定や災害発生時の遠隔監視システムの構築もできるとしている。
この製品により,サンプリングモアレカメラの適用範囲を拡大し,測定機器や足場の設置・撤去といった数時間から数日におよぶ作業の解消,橋梁等での通行規制不要の測定,河川等で橋梁直下や近傍に測定機器が設置できない場所での遠望からの測定の実現といった,インフラの維持管理・更新の高度化・効率化を図ることができ,高度な技術をもった人材・財源不足の解決への貢献が期待できるとしている。