東大ら,スピンによる熱流が磁場で曲がる原理を解明

東京大学と北海道大学は共同で,カゴメ反強磁性体Caカペラサイト石(CaCu3(OH)6Cl2・0.6H2O)で実現しているスピン液体相で,熱流が磁場によって曲げられる「熱ホール効果」が起きていることを発見した(ニュースリリース)。

そして,Schwinger-boson法という計算手法を用いてスピン液体相でのベリー位相と呼ばれる量子力学的効果を取り入れた計算を行なった結果,観測された熱ホール効果を非常に高い精度で再現することに成功した。

通常,熱ホール効果は電気の流れる金属で現れる現象で,Caカペラサイト石のような電気の流れない絶縁体ではどのようなメカニズムで現れているのか不明だった。今回,Caカペラサイト石で広い温度範囲にわたって高精度の熱ホール測定を行なったことで,スピン液体相でのベリー位相効果を取り入れた理論計算との詳細な比較が初めて可能になったという。

この研究成果は,カゴメ反強磁性体におけるスピン液体のトポロジー現象の一端を明らかにするもので,磁性体中のスピンを用いた熱流の制御や,謎の多い量子スピン液体形成の起源の解明にもつながることが期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 阪大ら,高い操作性を持つ光周波数変換機能を実現 2024年03月12日
  • 京大ら,ダイヤの励起子のスピン軌道相互作用を解明 2024年02月27日
  • 理研,シリコン量子ビットの高精度読み出しを実現 2024年02月14日
  • 広島大ら,電子/スピンを観察する走査型顕微鏡開発 2024年01月12日
  • 東大,スピンホール効果の周波数特性を円偏光で計測 2024年01月05日
  • 神大ら,五重項の室温量子コヒーレンスの観測に成功 2024年01月05日
  • 東大,量子コンピューター2種の時間発展を比較 2023年12月05日
  • 農工大,脱離したRb原子のスピン移行量を光で測定 2023年09月25日