理化学研究所(理研)と上海交通大学らの国際共同研究グループは,三角格子反強磁性体アンチモン酸バリウムコバルト(Ba3CoSb2O9)の強磁場中「磁化プラトー相」の量子スピンダイナミクスの詳細を明らかにした(ニュースリリース)。また,マグノン-スピノン対の分数化現象など,本質的に新しい現象が無磁場中で起きている可能性が高いことも示した。
今回,国際共同研究グループは,強磁場中の中性子散乱実験と非線形スピン波理論によってBa3CoSb2O9の磁化プラトー相の励起スペクトルを調べ,実験が非常によく再現されることを示した。このことは,量子効果によって実現している磁化プラトー相の磁気励起がよく知られたスピン波励起(マグノン)であることを意味するという。
さらに,対象物質の磁気異方性などのモデルパラメータを正確に決定することにより,先行研究で報告された無磁場中のBa3CoSb2O9の磁気励起スペクトルについて,逆に,通常のマグノンとしては説明できないことも明らかにした。
この成果により今後,マグノン-スピノン対の分数化現象を説明する理論研究や、Ba3CoSb2O9以外の量子磁性体で同じような新しい現象を探索する実験研究がさらに活性化することが期待できるという。スピノンのタイプによっては,量子コンピュータなど将来的な技術革新の主役となることが期待されているものもある。
研究グループは,マグノン-スピノン対の分数化現象についての今後の実験および理論研究の活性化が,スピノンという新しい分数励起について確かな知見を蓄積していくことに貢献すると考えているという。