矢野経済研究所は,2018年の国内外のフレキシブルディスプレー材料市場を調査し,Foldable(フォルダブル)スマートフォン世界出荷台数を予測するとともに,材料のセグメント別動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
曲面(Bended)スマートフォン向けのPI(ポリイミド)基材のフレキシブルOLEDの搭載が拡大し,表面硬度5H程度,折り曲げ半径R1~2程度の透明PIフィルムが開発されるなど,折り畳み(Foldable)端末の実現に向けた条件が整いつつある。業界内には2018年内にサムスン電子(SEC)が製品化するのは確実との見方もあり,スマートフォンのFoldable化の動きが現実味を帯びてきた。
一方で,仮に2018年内にFoldableスマートフォンが発売されたとしても,市場に定着するにはある程度の時間が必要で,常に端末を折りたたんだり開いたりして使用する中で,ディスプレイの劣化,センサーの断線,表面カバーの白化やひび割れなどの不具合が出てくるのは避けられない。Foldable端末の安定した需要が確立するのは2020年以降と予測する。
Foldableスマートフォン世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は,2018年には9万台に止まる見込みだが,2019年に30万台,2020年には90万台と急激に成長すると予測する。スタンダードになるには時間がかかるが,市場に投入されさえすれば,開発では見えてこなかった新たなニーズがマーケットの中から出てくる可能性は高く,フレキシブルディスプレー材料メーカーの開発課題もより明確化する。
調査では注目トピックとして,PI基板を用いたフレキシブルOLEDを挙げた。このパネルはリジッドなガラスを使用しないため,曲面形状やフルスクリーン化など,スマートフォンのデザインを向上できるとして採用が拡大している。また,AppleとSECに追従し,中国メーカーもフレキシブルOLEDパネルの搭載を検討している。2018年のスマートフォン向けフレキシブルOLEDパネル世界市場(メーカー出荷数量ベース)は前年比187.1%の2億6,000万枚と前年に続き大幅な拡大を予測する。
スマートフォン向けを中心としたフレキシブルOLEDパネルの需要が拡大しているなか,サムスンディスプレイ(SDC)とLGディスプレイ(LGD)が同パネルの生産ラインの増強を進めているほか,AMOLEDパネル市場へ参入をしようとするメーカーもフレキシブルOLEDパネルの量産化を目指すところが少なくない。今後もスマートフォン向け搭載が増え,2019年には同市場は4億9,100万枚(同ベース)となり,スマートフォン向けリジッドOLEDパネル市場を上回る規模に拡大すると予測する。
曲面(Bended)スマートフォンにはPI基板のフレキシブルOLEDが搭載されているが,単に曲面状のディスプレーが欲しいだけなら,厚み50μm程度で曲面対応可能な超薄板ガラスも使用できるが,敢えてPIフィルム基板のフレキシブルOLEDが採用されるのは,ユーザーサイドにフィルムを使用する必然性があるためとする。ディスプレー材料メーカーに求められるのはガラスの代替ではなく「フィルムの中でいかに選ばれるか」だとしている。
ここで勝ち抜くためには,ユーザーであるフレキシブルディスプレイメーカーにとって「使いやすい材料」の開発・提案が求められ,性能や品質はもちろん,価格や調達のしやすさも問われる。フレキシブルディスプレイ材料メーカーには,ユーザーの要求を満たす品質・性能のフィルムを,程よい価格でいつでも供給できる体制の確立が求められているとしている。