産総研ら,酸化CNTによる高輝度近赤外蛍光プローブを開発

産業技術総合研究所(産総研)は島津製作所と共同で,カーボンナノチューブ(CNT)を酸化する簡便な方法を考案するとともに,この方法で合成した酸化CNTを用いて,生体透過性の良い第2近赤外(NIR-II)領域で発光する近赤外蛍光イメージングプローブを開発した(ニュースリリース)。

CNTは蛍光を発することが知られているが,近年,CNTを孤立分散させた水に,オゾン水を混和し光を照射して,より高い蛍光量子収率の酸化CNTを合成する方法が報告されている。この酸化CNTは生体透過性の良い近赤外光で励起でき,NIR-II領域で発光する。しかし,酸化CNTの大量合成ができないなどの課題があった。

今回,紫外線照射で発生したオゾンでCNT薄膜に数分間の酸化処理を行なうことで,酸化CNTを合成する方法を開発した。この方法は,数時間の反応時間を要する従来法に比べ,短時間に多量の酸化CNTを合成できる。

合成した酸化CNTは近赤外光励起によりNIR-II領域で蛍光を発光するため,近赤外蛍光イメージングプローブとして応用できる。合成した酸化CNTの表面をリン脂質ポリエチレングリコール(PLPEG)でコーティングして水に分散できるようにし,生体内イメージングプローブとして用いてマウスの血管を長時間高輝度で造影できた。

また,免疫グロブリンG(IgG)を修飾したPLPEG(IgG-PLPEG)でコーティングしたところ,免疫沈降(IP)反応により,標的指向性を付与できる可能性が確認できた。

今回開発した酸化CNT合成法は,複雑な装置を必要とせず,数分間という短い反応時間で合成でき,スケールアップが容易などの利点がある。合成した酸化CNTは,生体透過性の良いNIR-II領域で蛍光を発光し,高輝度近赤外蛍光イメージングプローブとして使用できる。

さらに,適切な表面修飾を施すことによって,標的指向性を持つ高輝度近赤外蛍光イメージングプローブとしての応用が期待される。研究グループは今後,高輝度な酸化CNT近赤外蛍光イメージングプローブの実用化に取り組むとしている。

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