京大ら,排ガス触媒の酸化還元挙動をX線吸収分光法で解明

京都大学は,東京大学をはじめとする国内8の大学・研究機関と共同で,X線吸収分光法により貴金属成分の酸化還元挙動を解明した(ニュースリリース)。

研究グループは,大型放射光施設SPring-8にて,X線吸収分光法と様々なガス分析が可能なOperando XASシステムを構築した。この装置は,ガス混合装置により,CO,NO,HCおよびO2を含む模擬排ガスを作って,XAS測定が可能な高温触媒反応装置に導入し,触媒反応後の出口ガスをマイクロガスクロマトグラフ,NOx計,四重極型質量分析計で分析することができる。

実験では,自動車排ガス浄化触媒として,酸化アルミニウム担体に対して質量比で1%のRhを含むモデル触媒を用いて,各種ガス分析装置により,想定する触媒反応が進行していることを確認しながら,XAS分析により貴金属成分の酸化還元挙動を追跡した。

各分析結果を詳細に解析したところ,貴金属粒子表面の酸化過程において,酸化された箇所が徐々に広がっていくのに対して,還元過程では表面がランダムに還元されていくことを見いだした。この知見は,貴金属使用量の低減あるいは高耐久化への指針になると期待される。

この研究は,自動車排ガス浄化触媒上の貴金属粒子が模擬排ガス中でどのように酸化還元を起こすのかという基礎的な知見を与えるだけでなく,Operando XASシステムが触媒のその場分析に対して,強力なツールであることを実証したもの。

研究においては触媒反応中の生成ガスとX線吸収分光法による貴金属成分の変化を分析することにより,貴金属成分の酸化還元挙動に関する知見を得ることができた。この結果は自動車排ガス浄化触媒の耐久性向上に関する知見を与えると期待されるという。

現在のところCO,NOxなどの有害物質が触媒表面にどのように接触して,浄化が進行しているのかはわかっていない。今後は、触媒表面に吸着したガス成分の分析を可能とする赤外分光法を組み合わせることにより,より詳細な自動車排ガス浄化触媒の反応機構を明らかにする。

さらに,今回の研究においては実験室系で一般的な模擬排ガスを利用したが,より現実に近い条件あるいは実排ガス環境下における貴金属成分の挙動を明らかにする必要があるとしている。

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