理研ら,XFELを用いて原子核超放射を観測

理化学研究所(理研),欧州シンクロトロン放射光施設,独電子シンクロトロン研究所(DESY),米アドバンスドフォトンソース(APS),露国立研究センター・クルチャトフ研究所の研究グループは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAにおいて,原子核の集団からの「超放射」と呼ばれる量子力学的現象を観測し,今から60年以上前に提唱された基礎的な理論の検証に成功した(ニュースリリース)。

1954年,ロバート・ディッケは「超放射」と呼ばれる量子力学的現象を予測した。通常,光子などの量子を吸収して励起状態になった孤立原子は,ある時間が経過した後,量子を放出して基底状態へ戻る。これを「自然放射」という。

これに対して超放射は,同時に励起された多数の原子が一斉に量子を放出する現象で,量子放出までの時間(励起された原子の寿命)が自然放射よりも短くなるとともに,放射強度は高くなる。

今回,研究グループは,SACLAの強力なコヒーレントX線パルスによって共鳴励起された多数の鉄原子核(57Fe)からのX線放射の時間推移を観測した。その結果,放射されるX線量が増えるにしたがって最初のX線光子放出までの時間が劇的に短くなる「超放射」現象を捉えた。

研究では,放射X線の計数を1光子単位で行なうことにより,まさに最初の光子が放出されるまでの時間を知ることができた。この方法により,ディッケの理論を厳密に検証することができた。

この成果は将来,XFELや次世代放射光といった強力なX線を利用した観測の結果を解釈する上で重要な役割を果たすと期待できるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 京大など、放射光で可視化したポリエチレン内部密度揺らぎの可視化に成功

    京都大学と三井化学は、大型放射光研究施設SPring-8でのX線散乱測定および高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所のフォトンファクトリーにおける走査型透過X線顕微鏡(STXM)を組み合わせた解析、延伸し…

    2026.01.30
  • 京都大学、再生ポリプロピレンの破断要因を放射光で可視化

    京都大学の研究グループは、大型放射光施設SPring-8を用いた解析により、再生ポリプロピレン内部に残留する異物が破断特性に及ぼす影響を可視化し、その構造的要因を解明した(ニュースリリース)。 近年、使用済みのポリプロピ…

    2026.01.06
  • 分子研など3大学、光によってAu表面のスピン配置を最適化 メモリや超高感度センサーの実現に期待

    分子科学研究所(分子研)、総合研究大学院大学(総研大)、大阪大学(阪大)は、分子研の極端紫外光研究施設(UVSOR)の放射光と光電子運動量顕微鏡(PMM)にスピンローテーターと2次元スピンフィルターを組み合わせ、金(Au…

    2025.11.27
  • 東北大ら,放射光で酸化物電極触媒の構造変化を観察

    東北大学と神戸大学の研究グループは,水の電気分解が生じる電極と電解液の界面の原子配置が,時間とともに変化していく様子を,放射光を用いた界面構造解析で明らかにした(ニュースリリース)。 水の電気分解は環境負荷のないエネルギ…

    2025.10.09
  • 島根大ら,放射光で金属ガラス若返り現象を観測

    島根大学,広島大学,弘前大学,高エネルギー加速器研究機構,東北大学は,金属ガラスに液体窒素温度と室温の間を繰り返して上下させる「極低温若返り効果」を起こすことで電子状態が変化することを,放射光を用いた実験で明らかにした(…

    2025.09.11

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア