大阪市立大学は,ビオローゲンの構造を化学修飾したいくつかの新たな人工補酵素を用い,二酸化炭素のギ酸への光還元反応の効率化制御に成功した(ニュースリリース:ページ内11月15日付トピック)。
太陽光エネルギーを利用し二酸化炭素を有機分子に変換する人工光合成系を創製するための重要な要素技術の一つとして,有効な触媒の開発があげられる。
研究グループでは,これまでに二酸化炭素をギ酸(水素エネルギー貯蔵媒体等)に変換する反応を促進させる触媒であるギ酸脱水素酵素(FDH)に対し,ビオローゲンにアミノ基(-NH2)やカルボキシ基(-COOH)を導入した新たな人工補酵素を用いることにより,天然補酵素では不可能であったギ酸生成速度の制御に成功している(アミノ基を持つビオローゲンを用いるとギ酸生成速度が飛躍的に加速し,カルボキシ基を持つビオローゲンを用いると減速する)。
今回,人工補酵素を,色素分子とギ酸脱水素酵素(FDH)からなる,可視光で二酸化炭素をギ酸に変換する人工光合成系に利用した。
その結果,アミノ基を持つ人工補酵素(DAV・MAV)を用いると,1時間の可視光照射で,従来用いられていた人工補酵素メチルビオローゲン(MV)よりもギ酸生成速度が最大で2倍まで向上し,カルボキシル基を持つ人工補酵素(DCV・MCV)を用いるとギ酸生成速度が低下することも明らかになった。
今回の発見は,二酸化炭素を有機分子に変換する反応を光で制御可能な触媒設計・開発の進展に大きく寄与すると考えられ,今後のさらなるギ酸生成効率向上をめざした人工補酵素分子開発につながることが期待されるとしている。