理化学研究所(理研),高輝度光科学研究センターらの共同研究グループは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAにおいて,生体内で起こる化学反応を可視化する技術を開発した(ニュースリリース)。
酵素は,生体内でさまざまな化学反応を行なっている。そのメカニズムを知るためには,酵素の構造とその変化を原子レベルで見ることが不可欠となる。しかしこれまでは,反応前や反応後など酵素が止まっているときの構造は見られても,酵素が反応している最中の構造を見ることは困難だった。
今回,共同研究グループは,光を照射すると基質を放出するケージド化合物とSACLAの高品質なX線を組み合わせることで,酵素が反応している最中の構造を原子レベルで見る技術を開発した。そしてその技術を用いて,一酸化窒素還元酵素が,反応相手の分子を取り込む瞬間の構造を捉えることに成功した。
この技術を用いることで今後,さまざまな酵素の働く仕組みが解明され生命現象の理解が進むだけでなく,新薬の設計や開発などへの応用も期待できるとしている。