東京理科大学,米メリーランド大学の研究グループは,X線天文衛星ASTRO-Hによる銀河団中心部の観測データを解析し,ケイ素や鉄,ニッケルなどさまざまな特性X線の強度から,銀河団ガスに含まれるそれぞれの元素の組成を導いた(ニュースリリース)。
ASTRO-H衛星搭載の精密X線分光により,鉄属の元素量を初めて正確に測定することに成功した。結果,銀河団中心部の高温ガスに含まれるケイ素,硫黄,アルゴン,カルシウム,クロム,マンガン,鉄,ニッケルの元素の比がすべて太陽と同じであることがわかった。
この研究結果は,Ia型超新星の爆発メカニズムに対しても新たな知見を付け加えた。Ia型超新星爆発の原因となる白色矮星がどの程度の質量に達してIa型超新星爆発を起こすかによって,マンガンやニッケルと鉄の組成比が変わることが予想されている。
今回,ペルセウス座銀河団中心部で得られた鉄属の組成比は太陽と同じだったことから,この組成比を再現するために必要な質量の爆発タイプがともにわかった。
今後,軟X線分光検出器を搭載したX線天文衛星が実現すれば,元素の生成現場である超新星爆発の残骸や,銀河間空間に流れ出す元素,銀河団ガスに含まれる元素まで元素量を測定し,宇宙の化学進化史や物質循環の歴史を解明することができるとしている。