島津製作所は,専用ファントムとともに被検者を撮影したX線画像に独自の画像処理を行なうことで,様々な一般撮影システムやX線TVシステムでトモシンセシス画像を取得可能にする新しい技術を開発した(ニュースリリース)。
トモシンセシスは,Tomography(断層撮影)とSynthesis(合成)から作られた医療用語で,連続した複数枚のX線撮影画像から断層画像を作り出す技術。骨折線の詳細な観察や人工関節置換術後の経過観察など,整形領域を中心に有用性が認められている。現在,同社の製品においては,一般撮影システムのフラッグシップモデルとX線TVシステムのフラッグシップモデルでトモシンセシス撮影が可能となっている。
トモシンセシス撮影を用いると,骨や組織の重なりを避けて画像を得ることができ,単純X線撮影では確認が難しい骨折線の観察なども可能となる。しかし,この撮影を行なう装置には極めて精密な機械制御機構が必要となるため,トモシンセシス撮影が可能な機種は限られる。同社は,トモシンセシスをさらに利用しやすい技術とすることを目指し,新技術を開発した。
開発した新技術は,独自の位置情報算出アルゴリズムや,少ない撮影枚数でも断層画像の画質を保つ新しい手法に基づくもの。被検者の撮影部位付近に専用の位置合わせ用ファントムを設置して照射角度を変えながらX線撮影し,得られた複数枚の画像を専用ソフトウエアで処理することで,一般撮影システムやX線TVシステムでもトモシンセシス撮影が可能になる。
同社による評価では,従来のトモシンセシス画像と同等の空間分解能を確認している。この技術を実用化できれば,トモシンセシス技術の幅広い展開により,整形領域への貢献が期待できる。
同社は,ユーザビリティの向上やさらなる画質改良に取り組み,この技術の実用化を進める。最初の取り組みとして,この技術を同社の一般撮影システムに適用して2018年内に実用化する。その後,対応機種の拡大を計画している。