東北大学工学研究科の研究グループは,テラヘルツ波の特徴を活用することにより,プラスチックの機械的歪みや劣化を非破壊・非接触で診断できる技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
研究グループは今回,開発してきたテラヘルツ波が直線偏光であることを活かすテラヘルツ偏光分光に基づくポリマー(特にポリオレフィン系の結晶プラスチック)の内部歪みを非破壊・非接触で診断する新しい技術を実証した。
従来,ポリマーにおける分子鎖の状態を知るにはX線などの高エネルギーを用いる大型装置や真空中や強磁場などの特殊環境,高電圧試験が必要であり,分析のために試料を一部切断・回収する破壊検査であったため,検査対象全体の状態を評価することはできず,局所に発生するひずみを検知することはできなかった。
開発した技術は,ポリマーを構成する分子鎖のゆらぎがテラヘルツ波のエネルギーと同程度であり共鳴するという現象に基づき,分子鎖の並び方が歪みにより変化する様子をテラヘルツ波で検出するもの。分子鎖のゆらぎによるテラヘルツ波の吸収がテラヘルツ波の偏光方向が歪みの方向に対して平行及び垂直の場合で異なることから,歪みの大きさと方向を決めることができる。
また,分子鎖同士が結びついている程度,いわゆるポリマーの劣化進行度をテラヘルツ波と共鳴する周波数シフトから知ることができ,廃棄プラスチックが再度プラスチックとしてリサイクルできるかどうかの判断を非破壊で行なうことができるようになる。
プラスチックは生産されるものの22%が材料として再生利用されているが(2015年),その4割程度がペットボトルとしての再利用であり,電線被覆などインフラや産業から排出されるプラスチックの循環利用は確立されていないため,プラスチックのテラヘルツ非接触診断は社会の安全・安心の向上だけでなく,再生利用の促進も期待できるとしている。
[vsw id=”1to4uLkyyHo” source=”youtube” width=”425″ height=”344″ autoplay=”no”]