英調査会社IHS Markitは,有機ELパネル市場が2017年に前年比63%増の252億ドルに急成長する見通しと発表した。その背景には,スマートフォンやテレビ産業での有機ELパネル需要の拡大がある。
テレビについては国内でもソニー,パナソニック,東芝が相次いで市場に投入している。パネルではJOLEDがこの4月から印刷方式による21.6型4K有機ELパネルのサンプル出荷を開始した。想定している用途は医療用モニターとしている。このように国内でも有機EL市場が活況を呈してきた。
IHS Markitディスプレイ調査担当ディレクターのリッキー・パーク氏は「有機ELパネルのスマートフォンへの採用拡大と,有機ELテレビの販売増加がパネル市場成長の推進力となる。ヘッドマウントディスプレイやモバイルPCといった分野からの需要が堅調に伸びることも有機EL市場を下支えするだろう」と述べている。
スマートフォン市場における有機ELパネルでは,その需要が急拡大してきた背景について,特にフレキシブルタイプの場合,軽量薄型で様々なデザインの製品を設計・生産することが可能となり,大手スマートフォンメーカーが今年に入り,超狭額縁,あるいは無額縁のデザインを売りにしたプレミアムクラスのスマホ製品を競い合って発売してことがあるとしている。
リッキー・パーク氏は「Appleが今年後半にリリースするiPhoneシリーズに有機EL採用を決定したことや,中国スマートフォンメーカーが有機ELパネルに移行していることも,パネル市場に勢いを与えると見られる。急騰する需要を満たすため,韓国や中国のパネルメーカーは第6世代の有機ELラインへ重点的に投資し始めてきている」と語る。
市場ではモバイルフォンの占有率が高いが,テレビ向けの比率が高まり始めている。有機EL TVパネル市場は生産量増加に後押しされ,出荷量が昨年の89万枚から今年は150万枚へ成長すると見られている。有機ELパネルの出荷額は今後,年平均成長率22%で拡大し2021年には400億ドルを突破すると予測されている。◇
(月刊OPTRONICS 2017年8月号掲載)