浜松ホトニクスは,構造設計を工夫することで世界最高水準の時間分解能を実現し,同社従来品の半分となる100フェムト秒と極めて短時間内で起こる光現象を計測できるストリークカメラ「FESCA(フェスカ)-100」を新たに開発した(ニュースリリース)。
ストリークカメラは,極めて短時間内で起こる光現象に伴う,光強度の時間的な変化や空間情報を計測する装置。8月21日より発売を開始しており,価格は2,500万円。超短パルスレーザーの研究を行なう企業や研究機関,大学へ向け,展初年度に3台,3年後に10台/年の販売を見込む。
この製品は,同社が長年培ってきた設計技術およびシミュレーション技術によりストリーク管の構造設計を工夫し,ストリーク管内を飛行する電子の固まりの広がりを抑えることで世界最高水準の時間分解能を実現した,近紫外線から近赤外線の波長範囲に感度があるストリークカメラ。
電子は負の電荷を持っており,ストリーク管内を飛行する際に電子同士が反発し電子の固まりが広がってしまうため時間分解能が低下する。新製品では,シミュレーションを重ねストリーク管のフォーカス電極の構造および配置を最適化し,蛍光面に近い点で電子を集束させることで掃引電極の間を通過する時点での電子の固まりの広がりを抑え,時間分解能を従来品の200フェムト秒から100フェムト秒まで2倍に高めた。
この結果,バンチ幅を計測することで加速器を構成する装置を従来よりも精密に調整し,バンチ幅の短い電子の固まりを安定して作ることができるため,加速器を用いたさまざまな研究や実験への貢献が期待できるという。また,加速器以外の用途では,フェムト秒領域の超短パルスレーザの性能評価や半導体物理の研究などへの応用を展開していく。
同社では今後,X線の波長範囲に感度があり,100フェムト秒の時間分解能を持つストリークカメラを開発していくとしている。